研究概要 |
リチウムを含む合金として,第14族元素であるゲルマニウムおよびスズに注目し,その水素貯蔵特性に関して詳細に調査を行った。ゲルマニウム系に関しては,Li_<15>Ge_4(Li_<3.75>Ge)が,最も多くLiを含有する合金としてメカニカルアロイング法によって合成された。その後,水素化にともなってLiHの析出とともに,リチウムゲルマニウム合金からのLi原子の脱離が見られ,第一段階としてLi-Geの二元相図には現れない相が出現した。これは,Li_<14.10>Si_6(Li_<2.35>Si)に酷似した結晶構造であることが確認された。さらに水素化の進行とともに,LiHが析出したが,シリコンを用いた場合と異なり,LiHとGe相に完全に分離することはなく,Li_4Ge_2H(Li_2GeH_<0.5>)とLiHの二相が最終的な水素化状態であることが明らかとなった。この際の水素化に伴う二相平衡のプラトー圧力に対応するLiの脱離電位は,ネルンストの式とファントホッフの式を用いることによって,0.20Vおよび0.53V付近に現れることが明らかとなった。続いて,スズに関する研究では,メカニカルアロイングによってLi_<17>Sn_4(Li_<4.25>Sn)が合成されることが明らかとなり,水素化にともなって,Li_<13>Sn_5(Li_<2.6>Sn)および,LiSnまでLiが脱離してLiHを生成することが明らかとなった。同様にLiの挿入脱離電位は0.46Vおよび0.75Vであることが明らかとなった。 以上の結果は,リチウムを含む合金を利用して高容量の水素を吸蔵放出させる始めての系統的研究成果として,また,リチウムイオン電池の負極材料としての特性との相関性を明らかにした研究成果であり,それぞれ,J. Phys. Chem. Cに掲載され,J. Alloys Compd.に掲載が予定されている。
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