研究課題/領域番号 |
11F01073
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 千弘 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 教授
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研究分担者 |
BACOSA HernandoPactao 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | PAH / 微生物コンソーシアム / Burkholderia / 2成分培養 |
研究概要 |
我々は日本国内の油田周辺の石油汚染土壌から芳香族炭化水素を優先的に分解する微生物コンソーシアムを見出し、その分解能力を評価するとともに、微生物群集の構造を解析してきた。本研究ではこのコンソーシアムをベースとして、多環芳香族炭化水素(PAH)を分解する微生物コンソーシアムを開発し、難分解性のためしばしば土壌環境の汚染物質として問題となるPAHで汚染された土壌の浄化に利用することを目的とする。現有のコンソーシアムを用い、PAH唯一の炭素源を利用し微生物の単離を行ったところ、CupriavidusとPseudomonas属細菌が単離できた。すでに単離しているBurkholderia属細菌の単離株と、今回単離した2種の単離株を用いて液体培地中でPAH-脂肪族炭化水素(ナフタレン、フェナントレン、アントラセン:テトラデカン、ヘキサデカン、エイコサン)の2成分培養を行った。その結果、CupriavidusとPseudomonasの単離株ではPAHの優先的な分解が生じず、脂肪族炭化水素を分解した後、PAHが分解された。しかし、Burkholderia属細菌の単離株ではナフタレン/テトラデカンの培養においてナフタレンの優先的な分解が確認された。以上の結果より、現在のコンソーシアムの中で、芳香族炭化水素分解を担っているのはBurkholderia属細菌であることが推定された。よりPAH分解能力の高いコンソーシアムを得るために、仙台港、気仙沼港の周辺で油汚染された津波堆積物/土壌を採取し、フルオレン、フェナントレン、ピレンを主な炭素源として集積培養を行った。コンソーシアの作成を試みた10の接種源のうち、6つではPAH混合物の分解が確認された。これらのコンソーシアムからRhodococcus, Castellaniella, Azospirillum, AchromobacterとStenotrophomonas属細菌が単離できた。現在、各単離株について2成分培養での分解実験を行い、優先的にPAHを分解する能力を有する細菌のスクリーニングを行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の影響で微生物培養設備の復旧に時間を要し、またreal-time PCR、GC-MS等の分析装置が壊れたため、実験の開始が4ヶ月程度遅れてしまい、当初計画より研究の進行に若干の遅れが生じている。現在研究は順調に進行しており、24年度中に計画内容の達成は可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Burkholderia属細菌をベースとして他の単離株を混合しPAH分解実験を行い、培養液中の反応生成物を詳細に分析することで、PAHの代謝経路とその反応過程、並びにその過程における共存細菌の割合を明らかにする。PAHの代表物質として、フェナントレンを用い、分解生成物はGC-MS、LC-MSで分析する。油で汚染された津波堆積物から集積したコンソーシアムから、優れたPAH分解能を有する単離株を獲得する。合わせてそのコンソーシアムの群集構造を解析し、高能力PAH分解細菌とその共存細菌の関係を解明する。
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