研究概要 |
我々は日本国内の油田周辺の石油汚染土壌から芳香族炭化水素を優先的に分解する微生物コンソーシアムを見出し、その分解能力を評価するとともに、微生物群集の構造を解析してきた。本研究ではこのコンソーシアムをペースとして、多環芳香族炭化水素(PAH)を分解する微生物コンソーシアムを開発し、難分解性のためしばしば土壌環境の汚染物質として問題となるPAHで汚染された土壌の浄化に利用することを目的とする。PAH分解能力の高いコンソーシアムを得るために、仙台港、気仙沼港の周辺で油汚染された津波堆積物/土壌を採取し、フルオレン、フェナントレン、ピレンを主な炭素源として集積培養を行ったところ、その多くでPAHの分解が確認され、これらのコンソーシアムからRhodococcus, Castellaniella, Azospirillm, AchromobacterとStenotrophomonas属菌が単離できた。これらの単離株のPAH分解能力を確認した結果、仙台市近郊の津波堆積物から単離されたAzospilmum属細菌で特に高いPAH分解能力が認められた。また、この単離株および分離源の集積培養を用いて液体培地中でPAH-脂肪族炭化水素の2成分培養を行った結果、いずれの培養でもPAHの優先的な分解が確認されたため、このコンソーシアムの中で、芳香族炭化水素の優先的分解を担っているのはAzospirillum属細菌であることが推定された。また集積培養の各段階での16SrRNA遺伝子解析からこのコンソーシアムの群集構造を検討したところ、このコンソーシアムはAzospirillum属細菌を含む4種類の細菌が主要構成細菌として共生していることが示された。
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