研究課題/領域番号 |
11F01094
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白石 文秀 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授
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研究分担者 |
CHAND Rumi 九州大学, 大学院・農学研究院, 外国人特別研究員
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キーワード | 光触媒 / 疎水化処理 / シラン / 太陽光 / 廃水処理 / 水分蒸発 / シミュレーション / 液深 |
研究概要 |
本年度の2つの研究目的ごとに、その成果を示す。 目的1)疎水化処理した光触媒による水処理プロセスの研究: 溶射法によりステンレス金網上に固定化した酸化チタンを数種類のシラン-トルエン溶液で処理し、これを角形容器の底に静置し、6Wブラックライトから紫外線を照射しながら2,4-ジニトロフェノール(DNP)水溶液の処理を行うことにより光触媒調製物の分解活性を調べた。その結果、γアミノプロピルトリエトキシシランが有用であることを見出した。撹拌なしでシラン処理を行わない場合、DNP分解はゆっくり進行した。一方、シラン化したものではDNP分解速度が大きく増加した。最大活性はシラン濃度2%のときに得られた。また、太陽光照射下において、風力で回転する攪拌翼で液混合を行いながらDNP溶液処理を行い、液深のDNP分解活性への効果を調べたところ、深さ1.5cmまで分解速度が影響を受けないことがわかった。以上は、酸化チタン表面を疎水化すると疎水性のDNPが酸化チタン表面に強く引き寄せられ、迅速に分解されることによる。 目的2)開放系での光触媒による水処理プロセスの研究: 一般に光触媒を用いる水処理実験は、水が蒸発しないように密閉して行われる。これは水蒸発によりデータ解析が難しくなることや、溶液によっては水の蒸発とともに溶質も蒸発することによる。しかし、溶質の蒸発がない場合、積極的に水を蒸発させた方が有利ではないかと考えられる。 そこで、数式モデルを作成し、シミュレーションにより水蒸発の液処理速度への影響を検討した。その結果、水蒸発がある場合、最初は濃縮により溶質濃度が増大するが、次第にこれが分解速度を増加させるようになり、蒸発がない場合よりも短時間に処理が完了することがわかった。DNPが蒸発しないことを確認した上でDNP水溶液の処理実験を行い、本計算結果が正しいことを確認した。 以上の成果は、光触媒による排水処理を実用化する場合の重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目的1については予想通りの実験結果であり、現在論文を執筆中である。また、目的2についても、液蒸発速度だけでなく、溶質初濃度、紫外線強度が異なる場合でも溶質濃度の時間変化を正確にシミュレーションできるようになったこと、その結果を実験的に立証したことから達成度が高い。これらを受けて、現在次年度に向けた廃水処理装置設計および製作を進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を受けて、現在、連続攪拌槽型光触媒反応器を設計、製作中であり、これが完成した後に研究計画に従ったDNP水溶液処理実験を行う。また、本実験結果を数式モデルによるシミュレーションで検証する。 これまでのところ、研究計画の変更や研究を遂行する上での問題点はない。
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