研究課題
済州島周辺で採取できるコンブ科のカジメ(Ecklonia cava)に含まれる有効成分、フロロタンニンには免疫調節による抗アレルギー効果が期待されている。そこで本研究ではヒトアトピー性皮膚炎の自然発症モデルマウスであるNC/NgaTndマウスを用いて、フロロタンニンのひとつであるDiekolの抗アレルギー効果を検討している。(1)海洋性褐藻類から抽出したフロロタンニンのアトピー性皮膚炎改善効果の検証マウスへの治療あるいは予防投与試験を実施し、皮膚炎症状やかゆみ行動への効果を、病理組織学的、免疫学的に解析している。また、皮膚バリア機能や全身状態に与える影響を検証している。具体的には、アトピー性皮膚炎自然発症モデルNC/Tndマウスを用いて、Diekolの継続的な経口投与による皮膚炎発症抑制効果を検証している。(2)フロロタンニンの免疫系および知覚神経系に対する作用の検討今年度は、アトピー性皮膚炎において病態発生に大きく関与する肥満細胞に対するDiekolの作用を検討した。NC/Tndマウスの骨髄から骨髄由来培養肥満細胞(BMCMC)を誘導し、IgE介在性の活性化におけるDiekolの作用を解析したところ、Diekolは肥満細胞上の高親和性IgE受容体へのIgEの結合を濃度依存的に阻害すること、IgE受容体シグナルの活性化を抑制すること、結果的に肥満細胞の脱顆粒を抑制することが明らかとなった。In vitro実験で得られた結果を、マウスを用いた受動的皮膚アナフィラキシー反応系(PCA)を用いて検証したところ、Diekolはin vivoにおいても、IgE介在性のPCA反応を有意に抑制することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
マウスを用いた投与試験は現在進行中であり、平成24年度中に効果を明らかにする予定である。一方で肥満細胞を用いたDiekolのアレルギー反応抑制効果の解析では、in vitroおよびin vivoの両方できわめて良好な結果を得ており、平成24年6月にスイスで開催予定の欧州アレルギー臨床免疫学会で成果を口頭発表することが決まっている。
アトピー性皮膚炎自然発症モデルマウスを用いた前臨床試験を実施しているが、マウスの繁殖や抽出成分の投与経路・投与回数・投与期間などにまだまだ検討および改善の余地がある。そこで、まず肥満細胞に対するDiekolの抑制作用についてをまとめて論文化することを目指し、現在準備中である。
すべて 2011 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 備考 (1件)
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http://www.tuat.ac.jp/~mol_path/