研究課題/領域番号 |
11F01100
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
田中 淨 鳥取大学, 農学部, 教授
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研究分担者 |
YIN Lina 鳥取大学, 農学部, 外国人特別研究員
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キーワード | ポリアミン / ケイ酸 / 塩ストレス / 脂質アルデヒド / 活性酸素 / エチレン |
研究概要 |
植物をケイ酸処理すると乾燥、高塩耐性が向上するがその分子レベルの機構解明はほとんど進んでいない。乾燥地の主要作物ソルガムはケイ酸効果が高く、全ゲノムDNA配列が解読されたことから、ケイ酸効果を分子レベルで調べる上で好都合な植物である。ケイ酸処理ソルガムでポリアミン合成酵素遺伝子(S-adenosylmethionine decarboxylase:SbSAMDC)の発現が確認された。ポリアミンが、環境ストレス時の毒性物質あるいはストレス応答のシグナルの役割をするエチレン、活性酸素、脂質分解性アルデヒド、プロリン等の重要な生理活性物質と密接に関連していることから、SbSAMDC機能解明を通して、環境ストレス応答時のこれら生理活性物質の相互作用を明らかにし、SbSAMDC過剰発現、ノックアウトモデル植物(シロイヌナズナ)の乾燥ストレス応答、耐性を評価することで本遺伝子の乾燥ストレス耐性遺伝子としての有効性を確認し、最終的には乾燥耐性ジャガイモやコムギを開発する。 環境制御温室でケイ酸共存、非共存下でPEG(polyethylene glycol:吸水抑制剤)及び食塩を含む培地でソルガムを水耕栽培し、成長、水ポテンシャル、浸透圧、可溶性糖、プロリン含量、無機イオン濃度、抗酸化物質、ポリアミン、エチレン等を測定した。食塩、PEG処理はソルガムの成長を抑制し、ケイ酸が緩和効果を示した。高塩ストレス処理で、浸透圧は上昇したが、ケイ酸で顕著に減少した。ケイ酸処理で増加が確認された可溶性糖は浸透圧調節に関わっていると思われる。乾燥、高塩処理植物で、ケイ酸は抗酸化酵素、抗酸化物質を増加させた。乾燥、高塩処理でプロリンは増加し、ケイ酸で抑制された。同条件で、ケイ酸はポリアミンを増加させ、エチレンを減少させた。さらにポリアミンの外部添加により、食塩による成長抑制と植物体へのナトリウム取り込みが緩和されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケイ酸による高塩、乾燥ストレス緩和に関する生理的解析が予定通り進んだ。当初の目的の1つであったS-adenosylmethionine decarboxylase過剰発現形質転換シロイヌナズナ、ジャガイモの作出を試みたが、ゲノム中への遺伝子導入は確認できたが、RNA、タンパク質、酵素活性の発現はまだ確認できていないので、本年度継続する。本遺伝子の欠損シロイヌナズナを入手し、ホモ欠損種を選抜している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で、ソルガムから単離したポリアミン合成酵素S-adenosylmethionine decarboxylase形質転換植物の乾燥耐性作物開発の有効性が証明できたら、本遺伝子を高発現したポテト、イネ、コムギを作出し、乾燥地における作物生産向上に寄与する。ポリアミンと関連するエチレン、プロリン、活性酸素、脂質アルデヒド等の情報伝達物質との相互作用を調べることで、乾燥耐性向上にとって重要な生理活性物質、代謝反応を発見し、その鍵となる遺伝子を使って、高効率な乾燥耐性作物を開発する。この研究で得られた研究成果を中心にして、日中間で国際共同プロジェクトを立ち上げ、植物バイオテクノロジーを利用した世界の食糧生産向上を目指す。
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