研究課題/領域番号 |
11F01105
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
赤池 孝章 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授
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研究分担者 |
AHMED KhandakerAhtesham 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 外国人特別研究員
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キーワード | 敗血症 / シグナル伝達 / 活性酸素 / 一酸化窒素 / プロテオミクス |
研究概要 |
細菌感染に伴い起こる敗血症病態において、誘導型NO合成酵素によるNOの過剰産生の関与が示唆されているが、低血圧の持続や全身性の血管拡張のメカニズムについては不明な点が多く残されている。本研究では、NOと活性酸素の産生に伴って細胞内に生成する新規な環状ヌクレオチドである8-nitroguanosine3',5'-cyclic monophosphate(8-nitro-cGMP)の敗血症における生成と、その病態形成メカニズムへの役割を解析する。昨年度までに、敗血症モデルマウスの心臓に顕著に8-nitro-cGMPの生成が起こること、さらに8-nitro-cGMPによるタンパク質S-グアニル化修飾の標的として、cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)を同定した。本年度は、PKG活性におよぼすS-グアニル化の影響と、血管機能への作用を解析した。その結果、8-nitro-cGMPはPKGを強力に活性化し、その活性化作用は長期にわたって持続することが明らかとなった。その機序として、8-nitro-cGMPは、タンパク質S-グアニル化によってcGMP結合ドメインに共有結合を介して不可逆的に活性化していることが示された。さらに8-nitro-cGMPは、マウス大動脈に対して、不可逆的な弛緩作用を示すことが分かった。8-nitro-cGMPの構造類似体でPKG活性化作用を持たない化合物を合成した(Rp-8-nitro-cGMPS)。このRp-8-nitro-cGMPSは、8-nitro-cGMPによるPKG活性化を抑制するとともに、マウス大動脈に対する8-nitro-cGMPによる弛緩作用も強力に抑制することが明らかとなり、敗血症に対する新しい治療薬として現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
明確な構造設計に基づく新規な持続性PKG阻害剤の合成に成功し、さらにその薬理効果が組織レベル(マウス大動脈)を用いた解析から示された。
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今後の研究の推進方策 |
現在取り組んでいる、新規持続型PKG阻害剤による敗血症に対する治療効果を明らかにし、新しい治療戦略の確立に向けた研究を推進する。
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