研究課題/領域番号 |
11F01201
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
若林 克法 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者
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研究分担者 |
DUTTA S. 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 外国人特別研究員
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キーワード | グラフェン / 磁性 / 配置間相互作用 / エッジ効果 |
研究概要 |
一原子層の炭素原子膜であるグラフェンにおける、フェルミ準位近傍の電子状態は、質量のないディラック方程式に記述される。しかし、グラフェンの電子状態は、システムサイズやエッジの形状によって、大きな影響を受ける。特に、系のサイズがナノスケールなると電子物性はバルクのものとは大きく異なることを受け入れ研究者のグループが理論的に解明してきた。本研究では、グラフェンにおけるナノスケール効果や形状効果に着目し、電子状態や電子輸送特性への量子多体効果を理論的に解明することを主眼として研究を進める。本年度の研究実績は下記の通り。 ナノグラフェンのエッジに現れる磁性状態に関して、配置間相互作用(CI)の方法を用いて、その多体効果を含めた電荷およびスピン励起エネルギースペクトラムを解析した。特に、ホールドーピングに対して、ナノグラフェンの磁性状態および伝導特性の変化を解析した。ホールドーピングのないHalf-fillingでは、平均場近似で得られている描像がある程度正しいことが示されたが、ホールドーピングによって、電荷励起ギャップ、スピン励起ギャップ共に、急激に減少することを見出した。さらに、励起ギャップの減少と共に、強磁性相関が発達することを示した。これらのことから、電荷量のコントロールによって磁性状態をスイッチング可能な、グラフェン磁気デバイスへの応用が理論的に期待されることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ナノグラフェンにおける磁性状態に関して、配置間相互作用の方法から解析をし、ホールドーピング効果に対する理解を進展させることに成功した。本成果は、既に幾つかの国内および国際会議において発表をおこなっており、現在論文出版に向けて最終の段階に入っている。これらのことから、研究計画は、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題で得られた理論成果と、実験との整合を図るのが今後の研究推進の一つの方針となる。具体的には、構造再構成の起きたエッジ構造での磁性状態の解明があげられる。エッジ構造の変化による磁気的相関関数の振る舞いを理論的に同定する。また、電子スピン共鳴の実験結果との比較を行う。 さらに、当初の研究計画の一つである電子輸送特性解析プログラムの開発を次年度に、実施する計画である。
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