研究課題/領域番号 |
11F01310
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊谷 樹一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授
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研究分担者 |
MHANDO D.G. 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 飲料メーカー / キリマンジャロ / コーヒー / 世界市場 / タンザニア |
研究概要 |
タンザニア・コーヒー協会の資料によると、日本はこの数年間にタンザニアからのコーヒー輸入を大幅に増やし、今では最大の輸入国となっている。その背景には、ブラジルの急速な経済成長があった。世界最大のコーヒー消費国であるアメリカは、ブラジルをおもな輸入元としていたが、ブラジルの内需が拡大したことで価格が高騰し、輸入元を中米にひろげていった。中米から多くのコーヒーを輸入していた日本はアメリカの中米進出によって新たな供給地を探していた。日本ではコーヒーを喫茶店や家庭で消費するだけでなく、缶コーヒーや菓子などの加工用としても大量に消費している。とくに缶コーヒーを製造している飲料メーカーは、同質・同価格の商品を提供する必要性から、安定した品質の豆を安価で大量に輸入することが求められる。タンザニア産コーヒーは「キリマンジャロ・コーヒー」の名で知られ、かつて日本企業は最高品質の豆だけを輸入していたが、品質別の流通量を詳細に調べてみると、昨今の輸入量の増加は中程度の品質の豆が占めていることがわかった。 いっぽう、2012年9月に日本スペシャルティコーヒー協会が主催する"SCAJ2012"という催しが東京で開かれた。スペシャルティコーヒーは、生産国から消費国にいたるコーヒー産業全体の永続的な発展に寄与することを目的として、コーヒーの品質向上を支援する世界的な活動である。その会場の一角でアフリカファインコーヒー協会のセミナーが開かれ、アフリカの新興コーヒー産地がそれぞれの品質の特性を紹介・喧伝していたが、そのなかにタンザニアの名はなかった。"キリマンジャロ"というブランドに強く依存していたタンザニアは、長いコーヒー経済の低迷を経験したことで、コーヒー産業の方針を薄利多売に転換したといってよい。そして、日本の飲料メーカーはタンザニアのコーヒー産業にとって、世界市場における価格変動を緩衝する役割を果たしていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、タンザニア・コーヒーの価格の高騰が中国とインドにおけるコーヒー消費の増加であると予想していたが、統計資料を収集・分析した結果、日本の消費の動向と深く関係していることがわかった。そこで、調査対象とする消費国を日本に絞り、国内消費に関する統計資料の分析と飲料メーカーからの情報収集をすすめていった。また、コーヒー生産国タンザニアでの調査は、品質を維持するための政府機関や農家の取り組みと、販路の多様化に焦点をあてた。世界の動向を視野に入れながらタンザニアと日本の動きを捉えたことで、コーヒー生産と消費の連動メカニズムの概要を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に取り組みだした以降も、日本におけるコーヒー産業の状況は大きく変化してきたし、それは現在も続いている。具体的には、昨年以降、ハンバーガー・ショップなどの軽食店で挽きたてコーヒーを販売する店が急増し、それは大手コンビニエンス・ストアーにも拡大している。これは消費者の嗜好の変化を反映しているのかもしれないが、日本の消費スタイルがタンザニアのコーヒー経済に大きく影響することを考えると、その動向を慎重に捉えていく必要がある。平成25年度は、飲料メーカー・喫茶店・コンビニエンス・ストアーなど、コーヒーを扱う企業の動きを注視しつつ、その影響が生産地にどのように反映されるのかを同時並行的に調査し、コーヒー生産地と消費地の連動メカニズムの詳細を明らかにする。
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