当該年度には以下の研究を実施した。 (1)鏡は吊り下げらており、原理的には揺れがおさまれば、常に一定の平衡状態の姿勢が再現されるはずである。しかし、我々の吊り下げ鏡は、大きな揺れにより平衡状態が変化したり、また時間がたつと姿勢が変化したりして、干渉計を安定に動作させることが困難であった。そこで様々なテストを行った結果、鏡とワイヤーの接触点を規定するクランプに問題があることが判明した。そこで、ワイヤーのクランプ機構を改良したところ、吊り下げ鏡の姿勢は安定になった。 (2)輻射圧の反バネ効果は、20mg鏡の角度不安定性を引き起こすことが分かっている。これに対し、我々は、1インチ鏡の姿勢制御を行うことによりこの不安定性を回避する方法を検討してきた。複雑な制御トポロジーを持つこのシステムについて適切なモデルを構築しそれを使いシミュレーションを行ったところ、以前に得られた実験結果を非常にうまく説明することに成功した。 (3)改善された吊り下げ鏡を用い、光共振器を動作させたのだが、実験室の振動が大きく、安定な動作が困難であった。実験室内の振動レベルを測定したところ、数ヘルツの周波数で、引っ越し前に実験を行っていた場所と比べ数倍程度大きく、それにより鏡の姿勢が揺らぎ、昼間は全く動作状態に追い込むことができず、深夜にかろうじて短時間の動作が可能となるような状況であった。 (4)装置の振動レベルを抑えるため、より強力な防振システムの開発を行っている。具体的には、装置全体を振り子で吊るし、磁石を用いた渦電流によって共振周波数での揺れを抑える。 (5)周期的微小重力環境については、断続的なデータの解析方法を確立した。 実験装置に関する種々の改良を行った。いろいろな想定外の困難のため、当初の計画通りには進まなかったが、最終目標に向かって一歩進むことはできたと思われる。
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