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2012 年度 実績報告書

多段階物性変換が可能な機能性π電子材料の開発

研究課題

研究課題/領域番号 11F01337
研究機関名古屋大学

研究代表者

山口 茂弘  名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授

研究分担者 CHOU Chih-Ming  名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 外国人特別研究員
キーワードπ共役系 / アントラセン / ペンタセン / 環状分子 / 固体蛍光 / エキシマー / クリスタルエンジニアリング / 結晶歪み
研究概要

我々はまず、優れたπ電子骨格として、高い発光性を示す9,10-ビス(2-チエニル)エチニルアントラセン、高いホール移動度が期待できる6,13-ビス(2-チエニル)エチニルペンタセン骨格を選定し、これらの骨格をアルキレン鎖で環状に連結した二量体の合成に成功した。その溶液または固体状態における吸収や蛍光などの光物性を、対応する単量体と比較したところ、単量体は溶液中で498nmに量子収率0.84という蛍光を示したのに対し、二量体では563nmへと長波長シフトした蛍光(量子収率0.72)が観察された。これは、アルキレン鎖で架橋したことによりπ共役骨格の配向が制限され、溶液中でもエキシマーが形成しやすくなったためと考えられる。
また、合成した9,10-ビス(2-チエニル)エチニルアントラセンのアルキレン架橋環状二量体の固体状態におけるパッキング構造を明らかにするため、単結晶X線構造解析を実施した。すると、アルキレン鎖の組み合わせが両方ともヘプチレン鎖の場合にのみ、高い再現性で特有の曲がった形の結晶が得られることがわかった。曲がった結晶が得られる原因は興味深く、そのメカニズムが分子設計に起因したものなのかどうかを調査した。まず、曲がった結晶を熱処理した後に単結晶X線測定を実施したところ、分子間でπスタッキングした集積構造が得られた。この構造においてヘプチレン鎖はゴーシュ配座をとらざるを得ない状況にあることがわかった。熱処理前の曲がった結晶の粉末X線データを他のアルキレン鎖の長さが異なる類縁体と比べたところ、似たパターンを与え、πスタッキングに相当する回折ピークも観測された。以上の結果から、アルキレン鎖がゴーシュ型でなくアンチ型をとろうとして、πスタッキング構造が歪みながら速度論的に積み上がると、曲がった結晶になると推測できる。今後、この推論の正しさを証明するための実験を重ねる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画の通り、標的化合物群の合成ルートを確立し、既に各分子のパッキング構造と物性の評価へと研究を展開している。特に光物性について着実にデータを蓄積しており、本計画で標榜する「アルキレン鎖で連結することによるパッキング構造と固体物性の変換」について詳細に議論する舞台が整いつつある。一方で、予想外なことに、「曲がった結晶はなぜ得られるのか?」という根源的な化学の問いに答えうる分子系を扱っていることが明らかになってきた。この問いに答えることができれば、非常に普遍性がありインパクトの高い報告となる。

今後の研究の推進方策

現在、論文投稿に向けて原稿を執筆中である。今後は、曲がった結晶が得られるメカニズムに関して分子設計のレベルで議論し、現時点の推論をサポートするための実験を行う。この研究は、普遍性と新規性の両方が備わるテーマであり、高いインパクトが期待できるが、解析が難しいため慎重な議論が必要とされる。そのため、充分な化学的論拠を固めるべく、論文投稿に必要なデータを丁寧に揃えていくことが重要である。

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公開日: 2014-07-16  

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