研究概要 |
含窒素有機化合物は医薬品や天然物,生体高分子,機能性材料およびこれらの原料として社会的にも学術的にも重要な位置を占める化合物である.アミノ基やその等価体の反応性が比較的高いために,複雑な含窒素化合物の精密合成では多段階合成の終盤で窒素官能基を導入することが望ましい.アンモニア(NH_3)はハーバーボッシュ法により比較的安価かつ大量に生産されており,含窒素有機化合物を合成する際の窒素源として最も理想的な試薬である.アンモニア水は気体のアンモニアと比べてさらに扱いが容易である.しかしアンモニア水を用いて付加価値の高い複雑な含窒素化合物を合成できる手法は比較的限られている.これは狙った位置の望みの官能基にアンモニアを結合させる手法が十分に発達していないことに起因する.本研究の目的は,二官能性分子触媒を設計することによりアンモニア水を用いた官能基選択的な有機物のアミノ化反応を開発することにある.当該年度はいくつかの新規なハーフサンドイッチ型二官能性モリブデン錯体を合成し,その構造と水およびアンモニアに対する反応性を明らかにした.次にこれらの錯体について単純アルコール類の官能基選択的なアミノ化反応に対する触媒活性を調査した.その結果,錯体自体はアンモニア水溶液中で高い安定性を示すものの,現在のところいずれも従来の触媒系を上回る高い触媒活性を示すには至らなかった.
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