研究課題/領域番号 |
11F01344
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅 裕明 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授
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研究分担者 |
HIPOLITO CHRISTOPHER 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | non-standard amino acids / in vitro selection / flexizyme / co-crystallization peptide / enzyme inhibitor |
研究概要 |
Pyrococcus furiosus由来の膜蛋白質であるPfMATE(Multidrug and Toxic compound Extrusion)に結合するペプチドのセレクション実験を完了し、実際に化学合成した五種類の環状ペプチド全てがMATEに結合することを確認した。そのうちの一つの環状ペプチド(L6)について、PfMATEとの共結晶を作製し、その結合フォームのX線構造解析に成功した。その後さらなるX線構造解析実験を行い、新たに三種類の環状ペプチドについてもPfMATEとの複合体の構造を明らかにした。 さらにPfMATEの機能阻害実験も行い、五種類全ての環状ペプチドがPfMATEによる薬剤排出を阻害できることを発見した。その中でも、D5と名付けたペプチドは特に強いPfMATE阻害能を示した。D5-PfMATE複合体の構造解析の結果からは、D5はPfMATEに対する選択的を持つために必要な環状部位とらせん構造を取る尾部からなっており、この尾部によるPfMATEのコンフォメーション変化制限が薬剤排出の阻害に重要であることが示唆された。 同様のセレクション戦略により、Lysine-Specific Demethylase 1(LSD1)に結合するペプチドの選択にも成功した。これらのペプチドも化学合成し、現在その酵素阻害能を評価中である。このセレクションの成功により、このエピゲノム酵素がペプチド-ペプトイド複合骨格を持つ阻害剤探索の細胞内ターゲットとして適していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
PfMATEとの共結晶用の環状ペプチドを取得することでRaPIDシステムに関する知識を深めるということが、本プロジェクトの最初の段階であった。これは、合計五個もの目的の環状ペプチドを発見することが出来たことから、成功したと言えよう。さらに、これらのペプチドはPfMATEを阻害を示し、細菌やヒトにおける薬剤耐性問題を解決する糸口になることが期待される。これらの結果は、トップジャーナルに投稿すべく現在論文投稿準備中である。LSD1に関する研究も有望な結果が得られており、順調に進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
セレクションにより得たLSD1結合ペプチドの生理活性を評価する予定である。阻害能を示したペプチドについては、細胞内透過性及び血清中における安定性についても評価する。また、本プロジェクトのメインテーマの達成に向け、電荷を持つアミノ酸の除去やペプトイド骨格の導入などにより、さらに高い細胞内透過性及び血清中が期待できるペプチドの選択を目指してセレクションを再度行う計画である。 LSD1結合ペプチドの取得後には、エピゲノムメチラーゼSMYD3に結合・阻害する環状ペプチドの探索も行う。
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