研究課題
Pyrococcus furiosus由来の膜蛋白質であるPfMATE(Multidrug and Toxic compound Extrusion)に結合するペプチドのセレクション実験を完了し、実際に化学合成した五種類の環状ペプチド全てがMATEに結合することを確認した。そのうちの一つの環状ペプチド(L6)について、PfMATEとの共結晶を作製し、その結合フォームのX線構造解析に成功した。その後さらなるX線構造解析実験を行い、新たに三種類の環状ペプチドについてもPfMATEとの複合体の構造を明らかにした。さらにPfMATEの機能阻害実験も行い、五種類全ての環状ペプチドがPfMATEによる薬剤排出を阻害できることを発見した。その中でも、D5と名付けたペプチドは特に強いPfMATE阻害能を示した。D5-PfMATE複合体の構造解析の結果からは、D5はPfMATEに対する選択的を持つために必要な環状部位とらせん構造を取る尾部からなっており、この尾部によるPfMATEのコンフォメーション変化制限が薬剤排出の阻害に重要であることが示唆された。これらの成果については、論文化され2013年4月にNatureに発表された。また、D8ペプチドと共結晶化の解析結果も、論文を投稿中である。また、京都大学の研究者との共同研究で、バクテリアABC薬剤輸送膜タンパク質に結合し、阻害する特殊環状ペプチドの同定にも成功し、共結晶化を試みた。その結果、2.5Åという高い解像度で共結晶X線解析に成功した。またこのペプチドについても阻害活性が確認された。
1: 当初の計画以上に進展している
PfMATEの結果は、2013年4月にNatureに発表された。また、後続の論文も投稿中。さらに、ABC薬剤輸送膜タンパク質についても結果が出ており、今年度中には論文発表されると思われる。
ABC薬剤輸送膜タンパク質に加え、現在コレラおよびヒトのMATEやマウス-ヒトキメラ型ABC薬剤輸送膜タンパク質に結合する特殊ペプチドの探索も進行中であり、これらのプロジェクトを年度内に目処をつける予定である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 産業財産権 (1件)
Nature
巻: 496 ページ: 247-51
10.1038/nature12014
ACS Combinatorial Science
巻: 15(4) ページ: 174-182
10.1021/co3001378