研究課題/領域番号 |
11F01345
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉山 弘 京都大学, 理学研究科, 教授
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研究分担者 |
ARIVAZHAGAN Rajendran 京都大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | DNA origami / DNA nano device / B-Z conformation / G-quadruplex DNA / Conformational change / Single-molecular study / Real-time analysis / Atomic force microscopy |
研究概要 |
1)DNAのB型-Z型コンボメーション変化を用いたDNAロータリーモーターの開発及び解析。 私たちはDMのB型-Z型のコンポメーション変化を利用したDNAロータリーモーターを構築し、フレーム形状のDNAオリガミナノ構造体を用いてモーターに結合させたDMフラッグが回転する様子を一分子レベルで観察した。モーターはB型DMが安定な条件下で稼動しないが、Z型DNAを誘導するような高塩濃度条件下におくことで稼動する。MgCl2をモーターのスターターとして加えた場合、モーターの結合したフラッグのうち70%が回転したのに対して、モーターのないフラッグは24%しか回転しないという結果が得られた。このモーターシステムはDMナノ構造体を操作する手段の一つとして非常に有望であると考えられる。さらに本実験はDNAのB型-Z型のコンポメーション変化をリアルタイムで観察した初めての実験であり、DNAのコンホメーション変化への理解を深めることが出来たと考えられる。 2)D甑のグアニン4量体のコンポメーション解析 グアニンを多く含むオリゴヌクレオチドはグアニン同士の水素結合によってG-quadruplexと呼ばれる超分子的な構造をとる傾向にあることが知られている。G-quadruplex構造は生体内で重要な役割を果たしていると考えられているため、多くの研究グループによって最も重要なDNAコンホメーションの一つとして精力的な研究が行われている。 近年私たちはKClを用いて4分子からなるG-quadrupIex構造を誘導し、その形成過程を一分子レベルで観察することに成功した。本実験では2組の中央部にG-Gミスマッチ配列を持つ二本鎖D甑をDMオリガミフレーム構造体へ組み込み、高速AFMを用いてDNAの形状が変化する様子の観察を行った。その結果、KClを含むバッファーを加えることでG-quadruplexが形成される様子と、KClを含まないバッファーによってG-quadrup-exが壊れていく様子を観察することに成功した。従来の生化学的な手法ではG-quadrupIexのDM鎖の方向を制御して調べることは困難であったが、DNAオリガミはD甑鎖の方向を制御し実験を行うことを可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
はじめに私たちはAFMを用いてDNAのB型-Z型のコンホメーション変化の観察を行った。私たちのAFMを用いたリアルタイム解析によってDNAのコンホメーションへの理解を深めることが出来たと考えられる。さらにこのようなコンホメーション変化を用いたDNAロータリーモーターシステムの構築にも成功した。またGリッチなDNAのコンホメーション変化を塩によって誘導し、G-quadruplex構造が形成される様子と壊れていく様子をリアルタイムで観察することにも成功した。従来の生化学的な手法ではG-quadruplexのDNA鎖の方向を制御することは困難であったがDNAオリガミによって方向を制御しつつ実験を行うことが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
塩濃度をコントロールすることで、GリッチなDNAの構造の変化を誘導しその様子を観察することに成功した、同様のDNAナノ構造の構造制御の手法として小分子やタンパクに結合性を示すDNAを用いることが考えられる。この手法は抗がん剤やAIDSの治療薬の開発に非常に有効であると考えられ、現在私たちはオリガミ構造体上へ小分子を用いてG-quadruplex構造を誘導し、その形成及び崩壊の様子を観察することを試みている。またHN由来のシャペロニンを用いた実験についても検討を行っている。
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