研究課題/領域番号 |
11F01350
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
赤池 敏宏 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特任教授
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研究分担者 |
HOSSAIN M.S. 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 炭酸アパタイト / ES/iPS細胞 / si-RNAデリバリー / E-カドヘリンFcキメラタンパク質 / 細胞用まな板 / Cell-Cooking Plate / 細胞認識性マトリックス |
研究概要 |
DNA、RNA、医薬(制ガン剤)等を高効率で細胞内にデリバリーする非ウイルス系のナノ粒子キャリアーの設計・開発に世界で初めて成功(2006)以来、その粒子に担持されるmRNA、siRNAなどのRNA、DNAやシスプラチン、アドレアマイシン等の医薬が細胞内エンドソーム/リソゾームに取り込まれた後低pH条件化でのすみやかな崩壊過程を経て細胞内あるいは核内で本来の生理活性を発現することを明らかにした。さらに阪大(医)との共同研究によりアテロコラーゲン、リポフェクタミン他のいずれの市販RNA導入キャリアーよりも高性能の制ガン効果を発揮することを明らかにすることが出来た。 さらに2006年以降、長年にわたり設計開発してきた細胞認識性マトリックスの応用を目指し細胞接着分子であるE-カドヘリンの頭部と配向吸着性に優れた抗体分子の尾部をキメラ化した融合タンパク質E-カドヘリンFcを固定した表面上にマウスのES/iPS細胞は単細胞の状態で接着させ、あたかも料理用まな板(Cell-cooking Plate)上に細胞が乗せられたかのような状態で培養し増殖、分化を誘導し、この接着状態のES細胞にGFP遺伝子を導入し、既存マトリックス(ゼラチン)上で培養した場合と比較してた場合にE-カドヘリンFc上(単一細胞状態)の方ははるかに効率的にGFP遺伝子を導入できる事が判明した。 次にNanog GFP遺伝子を発現したマウスiPS細胞を両材料上で培養し炭酸アパタイトナノ粒子にKnock-down用si-RNAを封入して接触させたところ、ここでもE-カドヘリンFc上単一細胞状態にて培養されたiPS細胞の方が効率的にNanog GFP発現が阻害されている事実が判明した。 このまな板上に接着されたES/ips細胞に対する遺伝子/si-RNA等の活性分子を導入する際に他のレセプター(例えばインテグリン)に認識されるリガンド分子(例えばフィプロネクチン)をコートした炭酸アパタイト粒子(CAP-NP)は未コートのCAP-NPよりも一層選択的かつ効率的にDNA/si-RNAを導入できることも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ガン細胞(in vitro)、ガン治療(in vivo)を標的とした炭酸アパタイトナノ粒子の効用は順調で、細胞内に取り込まれた制ガン剤やsi・RNAの放出と活性発現は顕著であった。昨年は特に阪大(医)との共同研究によりナノ粒子形成時に超音波照射を行う事により、20nm近くまで微細化させることに成功した。in vivoにおいても極めて高い制ガン性活性を有した画期的なキャリヤー開発となった。またips細胞を形成させるための山中遺伝子送達法としてE-カドヘリンコートまな板上で効率的なips細胞を導入することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ips細胞を山中法を超える収率で形成されるために、E-カドヘリンFcコート表面上での細胞接着と異なる認識性リガンド(例えばインテグリン認識性のフィプロネクチン)をコートした炭酸アパタイトを組み合わせることで形成ips細胞への高いソーティング能と収率を有する細胞用まな板の実現を目指す (2)ガン治療用の炭酸アパタイト設計に成功し、その臨床応用は共同研究先の阪大消化器外科に託することとし、今年度は研究室独自の難病治療標的である肺線維症や肝線維症の治療用炭酸アパタイトの設計を目指す。特に線維症に係わるTGF-βのキトビオース含有ポリマーセンサーによる細胞選択的デリバリーを目指す。
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