研究概要 |
殺蚊トキシンCry4Aaは3つのドメイン(ドメインI~III)で構成され、他の多くのCryトキシンと非常に類似した構造を持つ。しかし、多くのCryトキシンで分子表面に露出するドメインIIのループ構造が受容体結合に関与するのに対し、Cry4Aaのループ構造は他の配列に置換できる。Cry4Aaの受容体結合にはドメインH以外の構造、もしくは複数のループ構造が相互補完的/協調的に働く可能性が考えられる。 本年度はCry4Aaと標的組織(刷子縁膜、BBM)の相互作用を詳しく解析する目的で、Cry4AaのドメインIIのループ構造を含む6種類のポリペプチド(β1-α8(E^<325>~T^<354>),β2-β3(T^<361>~H^<388>),β4-β5(Q^<396>~G^<414>),β6-β7(I^<419>~I^<447>),β8-β9(K^<456>~G^<475>),β10-β11(H^<499>~H^<524>)とドメインIII(S^<525>~Q^<695>)を生産し、それらとアカイエカ幼虫のBBMから抽出した膜タンパク質間の相互作用を解析した。 水晶発振子マイクロバランス(QCM)デバイスを用いた親和性解析の結果、β1-α8及びβ2-β3、ドメインIIIポリペプチドはCry4Aaに匹敵する高い結合親和性をBBMに示した。β1-α8及びβ2-β3はループα8及びループ1を含み、これらは置換可能な構造であるものの、受容体結合に何らかの役割を持つ可能性が考えられた。またCry4AaのドメインIIIには糖(糖鎖)と結合可能な構造があり、ドメインIIIがBBMに示す高い親和性は、タンパク質糖鎖を介した結合である可能性が考えられた。そこで様々な糖で処理したCry4Aaを用いてバイオアッセイを行った結果、GalNAc処理はCry4Aaの殺虫活性の促進し、Fucose処理は阻害することが示唆された。Cry4Aaにはレクチン様活性があり、それが殺虫活性に関与している可能性が示唆された。
|