研究課題/領域番号 |
11F01402
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西尾 嘉之 京都大学, 農学研究科, 教授
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研究分担者 |
CHANG Chunyu 京都大学, 農学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | セルロース / 多糖類 / 分子修飾 / ポリマーネットワーク / ハイブリッド / 無機物 / 機能材料 |
研究概要 |
本研究では、セルロース系多糖を対象に、「分子修飾とイオン性相互作用に基づくナノ構造レベルでの新規複合化」と「メゾスコピック特性(ゲル・液晶相)を担持させたネットワーク(IPN)構造での新規複合化」のための試料調製と測定・解析を行い、以下の成果を得た。 1.ナノ複合化 セルロースにブチラール基を導入して、環化反応による架橋の発達で耐衝撃性に優れるシート材料を創製することを目指した。予備検討の結果、セルロースそのものにブチラール基を直接導入することは困難であった。代替の出発試料として、セルロース/NaOH/尿素水溶液均一系でO-(2,3-ジヒドロキシプロピル)セルロース(DHPC)を調製した。DHPCの置換度(DS)とモル置換度(MS)をNMRにより定量する手法を確立した。DSとMSは反応条件(主としてグリシドール仕込量)によって制御可能であった。DHPCのブチラール化については現在最適な条件を探索している。 2.ネットワーク複合化 23年度には、スキャホールド等のバイオメディカル材料への応用を念頭に、キチンの等方的なゲルネットワーク(IPN)中にナノヒドロキシアパタイト(nHAp)が分散したハイブリッドの調製を試みた。NaOH/尿素水溶液を溶媒としたキチンの溶液にnHApを加え、超音波処理によりnHApを分散させた後に架橋剤を加えて有機-無機ナノコンポジットヒドロゲルを得た。電顕観察により、nHAp粒子は元の結晶構造を保持したままキチンゲルマトリックス中で良好に分散していることが判った。ナノコンポジットヒドロゲルはキチンのみのヒドロゲルの約10倍の強度をもつことが判った。ナノコンポジットヒドロゲルにCOS-7細胞を播種したところ、良好な接着性を示すと共に急速に増殖することが判った。 3.上記1と2に関連した相溶ブレンド系の構造および熱・光学特性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は、Chang氏(外国人特別研究員)が来日して5ヶ月未満の短期間であった。しかし前者の「ナノ複合化」については、予備実験に時間を要したものの、ブチラール化に適したセルロース誘導体が既に得られており、順調に進展しているといえる。後者の「ネットワーク複合化」についても、キチン/nHApのナノハイブリッド化に成功すると共に、得られるヒドロゲルの力学物性や細胞接着・増殖性に及ぼすnHApの効果を明確にすることができていることから、きわめて順調に進展している。よって、本研究課題は総じて、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
「ナノ複合化」に関しては、既に得たDHPCをベースとしたブチラール基含有セルロース誘導体の検討を継続して分子構造と物性の精密評価を行い、環状架橋構造の発達による強度向上効果の明確化を図る。別途、イオン雰囲気に応じて物性が変化する複合体調製にも着手する。「ネットワーク複合化」については、23年度に注力したキチン/nHAp等方性ナノハイブリッドゲルに加えて、異方的な液晶IPN構造中でのアパタイト沈着合成(リン酸・炭酸カルシウムのハイブリッド化)を検討する。
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