研究課題
セルロース系多糖の「分子修飾によるナノ構造レベルでの新規複合化」と「メゾスコピック特性(ゲル・液晶相)を担持させたネットワーク構造での新規複合化」に関して、以下の成果を得た。1. ナノレベル複合化(1)前年度に確立した二段階法により、コットンセルロースから前駆体(DHPC)を経由してセルロースブチラール誘導体(CB)を合成した。NMR解析から、当該CBは標準5員環構造に加えて8員環およびそれ以上の環状構造を側鎖に有することが判明した。(2)ホットプレス法で成形したCBフィルムは、水不溶であり、透明性が高くガラス接着性も良好であった。力学物性については、適度な延性に加えて、環状構造を含む側鎖の絡み合い効果によって優れたタフネスを示す。積層ガラスの強化材(接合膜)等に応用しうることが判った。2. ネットワーク複合化(1)前年度に準じた方法で調製したキトサン/ポリアクリル酸(PAA)のIPNゲルについて、対向拡散法と交互浸漬法の二法によってヒドロキシアパタイト(HAp)のミネラリゼーション実験を行った。拡散法では、純HAp結晶のCa/P化学量論比に近い割合での無機沈着成長が認められた。また、ゲル中のPM成分の増加と共に無機沈着量は増大し、無機粒子の形態も変化することが判明した。一方、浸漬法では、ゲル試料の無機取り込み量は概して多いものの、Ca/P比が高く且つ不揃いのHAp沈着と他のカルシウム化合物の共析出が起こりやすいことが判った。(2)エチルセルロース/PAAの液晶性IPNゲルの層間にHApを沈着させ、試料の呈色状態と剛性を制御することに成功した。(1)の結果と合わせ、多糖べ一スの新規な無機ハイブリッド材料としてバイオメディカル・光学分野への応用展開に繋がる好成果を導いたといえる。3. 上記1と2に関連したセルロース系多糖の複合系について、相構造と熱・光学・力学物性の基礎的な解析を行った。
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J. Polym. Sci., Part A, Polym. Chem.
巻: 51 ページ: 3590-3597
10.1002/pola.26773
http://www.fUkugou.kais.kyoto-u.ac.jp/