研究課題/領域番号 |
11F01405
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
良永 知義 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授
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研究分担者 |
KARLMARKANDAYA Quiazon 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | Anisakis simplex s.s. / Anisakis pegreffii / アレルゲン / 宿主内移動 |
研究概要 |
本研究は、人魚共通寄生虫であるAnisakis simplexの中の姉妹種A.simplex s.s.とA.pegreffiiについて、アレルゲン、宿主内移動、地理的分布について比較することを目的としている。本年度は、アレルゲンならびに宿主内移動に関する研究を実施した。(1)姉妹種2種から主要な3アレルゲン(Ani s 1,2,12)とマイナーな1アレルゲン(Ani s 9)のcDNAを得、演繹アミノ酸配列を決定したところ、アミノ酸配列にほとんど違いが認められす、また、IgE結合エピトープならびにヒト白血球抗原結合モチーフは保存されていた。これらの結果から、この姉妹種は同じアレルゲンを持っており、同様のアレルギー反応を示し、また、アレルギー反応が交差することが示唆された。これはA.pegreffiiのアレルゲンを明らかにした初めての研究である。(2)ニジマスをA.simplex s.s.で攻撃した。 その際、以前行った経口攻撃試験では、消化管から体腔に移動せずに消化管から直接糞と一緒に排泄された虫体の存在が示唆されたので、今回は、ニジマスに手術を施し、ニジマスの体腔内に直接虫体を挿入して攻撃した。また、同様に以前の実験は低水温でのみの実験であったため、今回は3つの温度区を設定して攻撃した。その結果、以前の実験と同様に、A.simplexs.s.は、高温では移動に要する時間が短くなるものの、前回の実験と同様、筋肉への移動が確認された。25年度にA.pegreffiiで同様の実験を行い、その結果と併せて2種の宿主内移動の様式を比較する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アレルゲンの比較については、予想以上に進展しており、主要4アレルゲンのうち3つを比較することができた。宿主内移動については、本年度中にA.pegreffiiをもちいた攻撃試験を計画し2回準備を行ったが、活力のある虫体を得ることが困難で、実験を開始することができなかった。地理的分布については、虫体の採集にとどまり、姉妹種の同定までには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
アレルゲンの比較については、主要アレルゲン1つを残し、ほぼ終了し、残ったアレルゲンについても完了する見通しが立っている。そこで、平成25年度はA.pegreffiiによる攻撃試験を地理的分布の比較について集中して研究を実施する。特に、平成24年度に虫体が入手できず実施できなかったA.pegreffiiによる攻撃試験については以下のように対処する。24年度は、分布域である九州の市場から輸送されたサバ類からA.pegreffii虫体得ていたが、これらの魚体はしばしば半冷凍状態にまで冷却されており、虫体が活力を失っていた。そこで、25年度は九州で直接買い付けて輸送することも試みる。
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