個体を構成する数十兆個の細胞には、ほぼ全てに時計遺伝子があり細胞活動や細胞周期がリズミックに行われている。従って、生体リズムは細胞にとっても基本的な現象である。しかし、生体リズムを無視した、24時間不夜城のような社会は急速に進行してきている。その結果、リズム異常が、高血圧、発癌などの生活習慣病の要因として近年注目されてきた。生体リズムは時計遺伝子の転写・翻訳ループによって24時間リズムが刻まれている。しかるに、そのリズムがどのように発生するのか、また、時計の異常が細胞増殖に影響をあたえるのかどうかも分かっていない。今回の検索において、数兆もの全身の時計を統合する生体時計の中枢である脳の時計である視交叉上核の時計と、通常の末梢細胞の代表である肝細胞の時計とを比較して解明する。マウス視交叉上核(SCN)でリズムを打ち始めるのは、神経幹細胞からニューロンへの分化が起こった後の、胎生18日ころの生まれる直前からである。視交叉上核のニューロンの発生は、DNA合成期をマーキングする3HチミジンやBrdUを胎生13日、14日、15日、16日、17日、18日と各々の日に腹腔内投与し、投与後1時間で固定した後、抗ペプチド抗体による免疫組織化学を行い、その後BrdUの免疫二重染色とオートラディオグラフィーを行い、視交叉上核のニューロンの発生時期を特定した。また、部分肝切除術を行い、BrdUの二重染色法で、概日変動を検討した結果、細胞分裂には、時間依存性があるが、現在までのところ、DNA合成には時間依存性は認められなかった。
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