生体時計の発生分化制御に関わる遺伝子機構の解明のため、肝臓を用いて検索した。まず、肝臓は肝実質細胞は、定常状態では細胞周期に入っている細胞がほとんど無い。実際細胞周期に入った細胞が発現するKi67が陽性の細胞は、肝臓では肝細胞はほとんど無く、クッパー細胞や内皮細胞が少数認められる程度である。肝実質細胞は正円型の大きな核を持ち、小型の楕円形や小円型のクロマチンに富む非肝細胞と容易に形態学的に区別できる。手術後、どのような時間帯で肝実質細胞が細胞周期に入るのか検索するため、ZTOで部分肝切除術を行い、その後28時間、36時間、40時間後のKi67とEduの標識効率を比較した。Ki67により細胞周期に入っている細胞を同定し、Eduは肝臓のサンプリング前1時間に投与し、その時点でのDNA合成期(S期)の細胞を同定する。その結果、Ki67陽性細胞は、28-40時間まで持続的に増加し続けるが、Edu細胞数は36時間がピークで、その後減少する。染色は、抗Ki67抗体にて細胞周期に入った細胞を同定し、EdU反応でS期の細胞を同定した。次に、二重染色により、手術後各時間における細胞の増殖活性を示すS期細胞比率の変動を同定する。S期細胞比率は36時間では80%に達するが、40時間では40%程度まで落ちた。従って、肝切除にて、肝細胞がGOから出て、細胞周期のS期へ移行し、その後G2に行く可能性が示唆された。
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