研究課題
細胞の増殖のタイミングが、抑制性キナーゼであるWee1等の制御を介し、生体時計で制御されていることは周知の事実である。今回、時計遺伝子欠損マウス(CGDマウス)での肝臓再生の異常を検索することにより、生体時計の発生分化制御にかかわる時計遺伝子機構を検索した。まず、マウス肝臓の70%部分肝切除後を施行し、野生型とCGDマウスとの、再生肝の再生能力の差を検索した。そのためにサンプリング1時間前にBrdUを投与しその時点でのDNA合成をマーキングし、術後様々な時間でサンプリングした。抗Ki67抗体にて細胞周期に入った細胞を同定し、anti-BrdU抗体やEdU-Click反応でS期の細胞を同定し、これらの二重染色により、手術後各時間におけるS期細胞比率等の変動を検討した。その結果、CGDマウスと野生型マウスには、細胞増殖効率に明らかな差は認められなかった。また、部分肝切除術後の発がん性を含む病変を検索しているが、現在までには異常が認められなかった。一部のマウスに炎症性細胞浸潤が認められた。以上の所見は、肝細胞の細胞周期を1サイクル回る時間に明らかな差が無いことをあらわすが、細胞発生が異常かどうかわからない。生体成熟肝細胞では、基本的には細胞分裂を行なわないが、発生期の肝細胞は分裂する。そこで、時計遺伝子による時計遺伝子の細胞発生への関与をより詳細に検索するため、生後3週のCGDマウスの肝臓から採取した肝細胞の初代培養を用いて細胞発生異常の検索を開始した。野生型マウスから採取した肝細胞の分裂頻度は25%-30%であったが、CGDマウスも同程度であった。この分裂頻度は、単核細胞も、2核細胞も同じであった。現在さらに、初代培養細胞系を用いて、生体時計の発生分化制御に関わる遺伝子機構を追求している。
2: おおむね順調に進展している
研究は順調に展開し、十分な成果を上げている。
「生体時計の発生分化制御に関わる遺伝子機構の解明」を、肝細胞の初代培養系を用い、遺伝子改変マウスを用い、詰めの実験を行ない、成果を出す。
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Cell
巻: 155 ページ: 793-806
10.1016/j.cell.2013.10.026
実験医学
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