研究概要 |
前年度より継続して実施した本研究の目的は、内皮由来過分極因子(EDHF)の作用機序を解明することであった。本研究員は、特に細い動脈を扱う技術に優れているため、冠動脈・腸間膜動脈などの微小血管の摘出標本を用いて、これらの部位別の差異を検討すること、さらに、代謝性疾患のシグナル機構として重要なAM Pkinase (AMPK)に関して、血管内皮特異的AMPK欠損マウスを用いた、EDHF反応におけるAMPKの役割の解明を目指して研究を進めた。前年度より準備していた、血管内皮特異的AMPK欠損マウスを作製する事に成功し、同マウスにおいてEDHFが減弱しているという新たな知見を得ており、さらに、同マウスの冠循環においてにEDHFによる冠血流予備量が著減している事、および同マウスが高血圧を呈する事をも明らかにした。現在、さらなる分子機序の解明に取り組んでおり、これらの一連の研究により、心血管系の恒常性の維持におけるEDHFの重要性が明らかになるとともに、糖尿病をはじめとした代謝性疾患における、血管内皮機能不全の分子機構の解明や、新たな治療法の開発に結びつくことが期待される。なお、これまでの成果は、平成25年6月に第13回日本NO学会で発表し、また、平成26年3月27日付で、査読付きの国際的医学誌であるArteriosclerosis, thrombosis, and vascular biology誌へ投稿中である。
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