研究課題/領域番号 |
11F01501
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
NORI FRANCO 独立行政法人理化学研究所, デジタル・マテリアル研究チーム, チームリーダー
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研究分担者 |
JOHANSSON ROBERT 独立行政法人理化学研究所, デジタル・マテリアル研究チーム, 外国人特別研究員
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キーワード | カシミール効果 / 真空 / 超伝導 / 揺らぎ / 量子 / 力学 / 回路 / QED |
研究概要 |
2011年度、私は超伝導回路における量子真空物理に関する研究に従事した。Chalmers University of Technologyの実験グループと協同で、超伝導電子回路を使用した動的カシミール効果を実験証明することに最初に成功したのである。この動的カシミール効果は長年に渡り実験証明が不可能であったので、このトピックに関する我々の研究は大きな注目を浴びた。このプロジェクトでの私の役割は、実験回路、理論的モデル化そして数値シミュレーション(Nature 2011)を導き出すことであった。また、量子真空に関連する効果および超伝導回路でのそれらの実現の総合的なレビュー(Review of Modern Physics 2012)に従事した。他の例としてはホーキング放射やウンルー効果等があり、それらに対する超伝導回路の実現可能性も研究した。我々は、広範な量子類似現象を実現する上で超伝導回路は用途が広く有望なシステムでもあり、したがって基本的な量子問題および量子場問題に関する研究に有益であると結論づけた。上述の2つの主要プロジェクトに加え、数値量子力学シミュレーションに対するソフトウェアの枠組みに従事した。このトピックに関する我々の研究論文はComputer Physics Communications誌に掲載予定である。 また、別の理研研究者と協同で、古典力学および量子力学の両理論により記述される動力学を明確に区分できる観測可能な物理量に対する不等式を導出することにより、オプトメカニカルシステムにおいて古典力学的および量子力学的な振る舞いを区別する問題を研究してきた。ナノ機械システムの量子力学的性質は最近の実験技術の進歩のおかげで時宜を得たトピックであり、我々の研究は量子領域に到達したかどうかを決定的に結論づける実験に適用可能な方法となることを意図している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JSPSプロジェクトに向けた私の研究計画の2つの重要目標は、(1)動的カシミール効果に関して実験研究者との協同研究の継続、そして(2)超伝導回路における量子力学の諸研究に適用する予定である、量子動力学シミュレーションソフトウェアの開発であった。最初の目標(1)はすでに達成し、発表されており、また目標(2)はほぼ完成しており、近い将来に発表予定である。したがって、研究は研究計画通りに順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
上述の数値量子力学シミュレーションに対する枠組みが完成した後、私はこのツールを超伝導電子回路における工学的量子力学、たとえば、そのような回路のデコヒーレンスと動的性質、特に振幅分光法に関連する問題に適用する計画である。また、超伝導回路における量子真空に関連する効果に関する自身の研究、特に回路実現の研究申請および増幅された量子真空のゆらぎ(たとえば、動的カシミール効果)からの放射の量子統計の研究を継続するつもりである。
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