研究課題/領域番号 |
11F01510
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
花方 信孝 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノテクノロジー融合ステーション, ステーション長
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研究分担者 |
CHEN Song (独)物質・材料研究機構, ナノテクノロジー融合ステーション, 外国人特別研究員
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キーワード | キトサン / ナノ粒子 / CpGオリゴデオキシヌクレオチド / TLR9 / 炎症性サイトカイン / インターフェロン |
研究概要 |
本研究は、生体分子であるキトサンと無機材料のハイブリッドナノ粒子を開発し、日本人の代表的なアレルギー疾患である花粉症の予防および治療のための核酸医薬デリバリーに利用することを目的としている。これまで、キトサンの分子量が核酸医薬であるCpGオリゴデオキシヌクレオチドのデリバリーに及ぼす影響について調べ、キトサン分子量がCpGオリゴヌクレオチドによる炎症性サイトカイン誘導能に逆比例することを明らかにした。H24年度は、キトサンの脱アセチル化度がCpGオリゴヌクレオチドによる炎症性サイトカイン誘導に及ぼす影響について調べたが、脱アセチル化度の違いによる炎症性サイトカイン誘導の影響は観察されなかった。したがって、キトサンの分子量のみが炎症性サイトカイン誘導に影響しているが、これは分子量によるチャージの差に起因していると考えられる。すなわち、キトサンのチャージはCpGオリゴデオキシヌクレオチドの凝集状態を変化させる可能性がある。 これまで、キトサンと無機材料のハイブリッドナノ粒子にCpGデリバリーに関して、炎症性サイトカイン誘導に関する検討を行ってきたが、このハイブリッド粒子はインターフェロン誘導を抑制していた。この抑制が、キトサンによるものかどうかを検討した結果、キトサンにはインターフェロンを抑制する作用があることを見出した。さらに、この抑制はTLR9を介したインターフェロン誘導に特異的であり、RNAによるTLR3,7/8あるいはリボ多糖によるTLR4、さらに細胞質DNAセンサーを介したインターフェロン誘導は抑制しないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、核酸医薬であるCpGオリゴデオキシヌクレオチドをキトサンハイブリッド粒子により免疫細胞である樹状細胞に送達し、炎症性サイトカインの効率的な誘導によりアレルギー治療のためのデリバリーシステムを構築することを目的としている。低分子量キトサンハイブリッド粒子により、炎症性サイトカイン誘導量が約8倍向上するという結果を得、目的に対して順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究において、キトサンにはTLR9特異的なインターフェロン誘導抑制効果があることを発見した。TLR9は、ある条件下において自己のDNAと相互作用しインターフェロンを誘導することによって自己免疫疾患を引き起こすことが示唆されている。当初の目的にはなかったが、キトサンと無機材料のハイブリッド粒子は、TLR9を介した自己免疫疾患の治療にも応用できる可能性があり、炎症性サイトカイン誘導とともにインターフェロン抑制についても取り組む。
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