研究課題/領域番号 |
11F01512
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 元雅 独立行政法人理化学研究所, タンパク質構造疾患研究チーム, チームリーダー
|
研究分担者 |
HUI Kai-WanKelvin 独立行政法人理化学研究所, タンパク質構造疾患研究チーム, 外国人特別研究員
|
キーワード | 精神疾患 / 精神変性疾患 / 凝集体 / ミスフォールディング / ニューロン |
研究概要 |
ゲノムワイドな遺伝学的研究(GWAS)により同定されてきた50以上の精神疾患(統合失調症や自閉症など)の危険因子(遺伝子)のcDNAを理化学研究所のFANTOMクローンから取得し、培養細胞およびウイルスによる発現用のプラスミドに入れ、遺伝子発現系を構築した。培養細胞で各遺伝子を過剰発現させ、フィルタートラップアッセイにより、界面活性剤に抵抗性のあるタンパク質凝集体を形成するか否か検討を行った。その結果、界面活性剤に抵抗性のある凝集体を形成できる精神疾患危険因子を数多く、同定した。また、大脳皮質ニューロン(初代培養)を用いても、これら凝集性の高いタンパク質が過剰発現によってニューロンの中で凝集体を形成することを確認した。また、これら凝集性の高い精神疾患危険因子のいくつかは、神経変性疾患であり、その原因タンパク質であるハンチンチンが凝集体を形成するハンチントン病モデルマウスの脳内において、ハンチンチンと共凝集していることが明らかになった。 これらの知見をin vitroの系で確認するために、凝集性の高い精神疾患危険因子タンパク質を大腸菌中で発現させ、精製し、その精製タンパク質が容易に凝集体を形成するか検討した。その凝集体の物性や構造を分光学的な手法で解析したところ、容易に界面活性剤に抵抗性のある凝集体を生成することを見出した。 さらに、「精神障害におけるタンパク質凝集仮説」を検証するために、我々が精神疾患のモデルになるのではないかと考えたマウスの解析を行った。非常に興味深いことに、そのマウス脳において、これまでに見出してきた複数の凝集性の高い精神疾患危険因子タンパク質が顕著に凝集していることが、免疫染色や生化学的な解析から明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くの精神疾患危険因子タンパク質は凝集性が高いことを見出し、細胞やマウスを用いた解析でも、その知見を支持するデータを得てきているため。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの知見から我々が精神疾患のモデルになるのではないかと考えたマウスの免疫化学、生化学的な解析を引き続き行い、他にも我々がこれまでに見出してきた精神疾患危険因子タンパク質がマウスの脳内で凝集しているか検討を行う。また、このマウスが精神障害を示すかどうか、社会性行動などの行動解析を行う。また、統合失調症などの精神疾患の患者脳も現在、複数のブレインバンクから取り寄せ中であるため(倫理審査は終了)、実際のヒト患者脳で、我々の注目している精神疾患危険因子タンパク質が凝集しているか調べる。また、危険因子タンパク質の凝集によって、シナプスにどのような機能不全が引き起こされているか検討する。このマウスが運動障害も示してしまう場合には、遺伝子発現の時空間的制御ができるような系を構築し、複数の危険因子タンパク質の凝集によって、純粋に精神障害のみを示すような"精神疾患モデルマウス"を作成できるか検討する。
|