研究課題
精神疾患や自閉症研究は、近年のシーケンサー技術の発展に伴うゲノムワイドな遺伝学的研究によって、数多くの危険因子や新規な点変異の同定、コピー数変動の発見など一定の成果を見せてきた、しかし、その症状の幅が広く複雑であり、原因も遺伝因子、環境因子の両方が関与しているため、いまだこれら疾患の根本的な理解は進んでいない。これまでの既存の概念でこれら疾患を説明することは難しく、新たな発想、概念に基づく研究が必要である。本研究では、これまでの知見をもとに、精神疾患危険因子の凝集化による機能の喪失・獲得に着目し、精神疾患の病態解明を目指す。本研究では、シナプスに存在する、統合失調症や自閉症の危険因子タンパク質の多くが過剰発現によって凝集しやすいことを培養細胞や初代培養ニューロンを用いた生化学的、免疫化学的な解析で明らかにした。そこで次に、タンパク質の凝集化が精神障害に関わるかをより一般的に検討するために、大脳内の前頭葉と海馬で主要なタンパク質分解系の一つであるオートファジー機能を欠損させたマウスを用いた解析を行った。その結果、予想通り、脳内の同部位でDISC1などの多くの精神疾患危険因子の凝集体を見出し、その多くはp62の凝集体と共局在した。また、このマウス脳において、スパインのサイズが小さくなり、電気生理実験から、長期増強の誘導や基底レベルでの神経伝達能が低下していることが明らかになった。次に、このマウスが精神障害を示すか検討したところ、社会性の欠如や新奇性追求の欠如などの表現型を示すことを見出した。これらの結果は、シナプスにおける精神疾患危険因子タンパク質の凝集化が精神障害の発現に関わっていることを示唆している。
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Cell Reports
巻: 5 ページ: 61-69
10.1016/j.celrep.2013.08.042
http://www.motomasalab.brain.riken.jp