研究課題/領域番号 |
11F01513
|
研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 雅雄 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 主任研究員
|
研究分担者 |
AUTSAVAPROMPOM Narongchai 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 外国人特別研究員
|
キーワード | バイスタンダー効果 / マイクロビーム / 重イオン / 細胞増殖死 / ギャップジャンクション / 細胞間情報伝達機構 |
研究概要 |
日本原子力研究開発機構の重イオン(220MeV炭素、260MeVネオン、460MeVアルゴン)と高エネルギー加速器研究機構のX線の各種放射線マイクロビームを用い、ヒト正常細胞のコロニー形成法で検出した細胞増殖死に対するバイスタンダー効果誘導を調べた。マイクロビーム照射は、照射用ディッシュ上に培養した全細胞数のうち0.04%程の細胞のみにマイクロビームを選択照射し、大多数の非照射細胞(バイスタンダー細胞)と共存させ、得られる混合細胞集団の致死効果を解析することによりバイスタンダー効果誘導を評価した。また、バイスタンダー効果誘導メカニズムの細胞内在性因子解明のために、ギャップジャンクション(GJ)特異的阻害剤を併用する照射実験を実施した。実験結果より、炭素イオンマイクロビーム照射群の細胞生存率は、GJ特異的阻害剤を併用しない場合は90%弱となり、併用した場合はほぼ100%となった。一方、X線・ネオンイオン・アルゴンイオンの結果は、GJ特異的阻害剤併用の有無に係わらず、生存率はほぼ100%となった。今回実施したマイクロビーム照射法では、マイクロビームが直接照射される細胞は全細胞数に対して約0.04%と計算されることから、イオンが直接照射された細胞のみに致死が生ずると仮定すると生存率は99.96%と計算される。しかし炭素イオン照射のGJ特異的阻害剤を併用しない場合で計算される予測値を遙かに超えて高い致死効果を示したことから、マイクロビームを直接照射されていない細胞にも二次的な影響として細胞致死が誘導されたど考える。即ちバイスタンダー効果が誘導されたと考える。また、観察された炭素イオン誘発バイスタンダー効果は、GJ特異的阻害剤を併用することにより消失したことから、GJを介した細胞間情報伝達機構(GJIC)がバイスタンダー効果誘導メカニズムに密接に関与していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属研究機関以外でのマイクロビーム照射実験において、すでに採択されている共同研究課題(原子力機構、課題番号:111023、課題名『遺伝子突然変異誘発に対するバイスタンダー効果とそのメカニズム解明』、課題代表者:鈴木雅雄)、(高エネ機構、課題番号:2011G572、課題名『X線マイクロビームを細胞核または細胞質に限定的に照射したときに生ずる生物効果のバイスタンダー効果解析』、課題代表者:鈴木雅雄)、によって研究実施に十分なビームタイムの供給を受けることが出来たため。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度も前年度と同レベルのマイクロビーム照射実験(ビームタイム)の確保が可能なため、申請研究計画に従い、粛々と実験を遂行することにより当初予定した研究成果を挙げることが出来ると考えている。
|