研究概要 |
caprazamycinは五十嵐らにより2003年に報告された放線菌由来の核酸系抗生物であり,従来の結核菌のみならず超多剤耐性結核菌XDR-TBに対しても良好な抗菌活性を示すCPZEN-45の前駆体でもある.本研究は,新たな抗XDR-TB剤開発を目指した構造活性相関研究に適用可能なcaprazamycinの効率的な触媒的不斉合成法の確立を目的とした. 23年度はまずcaprazamycinのウリジン部位とジアゼパノン環の接合部に存在する1,2-syn-アミノアルコール部位の立体選択的構築を試みた.当研究室で開発された触媒的不斉ダイレクトチオアミドアルドール反応を用いた場合では最大8:1の選択性で逆の立体化学を,イソシアノ酢酸エステルを基質としたアルドール反応を用いた場合では最大12:1の選択性で正しい立体化学を有する1,2-syn-アミノアルコール前駆体へと変換された.前者は触媒的不斉反応の系をジアステレオ選択的反応に適用し選択性を劇的に向上させる効果を狙ったが,基質由来の立体識別が優る結果となった.一方,後者は基質に存在するリボースの水酸基の保護基を嵩高いTIPSとすることにより,比較的高い選択性を達成した. 側鎖のβ-ヒドロキシエステル部位のエナンチオ選択的構築には対応する酢酸由来のチオアミドと長鎖脂肪族アルデヒドを基質とした触媒的不斉ダイレクトチオアミドアルドール反応の適用を試み,86% eeの光学収率にて生成物を得ることが出来た. また同じく側鎖に存在する非対称3-メチルグルタル酸ジエステル部位の構築に応用可能な,アルコールを求核剤とした同無水物のエナンチオ選択的開環反応について検討を行った.その結果,当研究室で開発された二核ニッケル-光学活性シッフ塩基錯体を用いることにより,94% eeの選択性で所望のモノメチルエステルを合成することに成功した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたウリジン部位とジアゼパノン環の接合部に存在する1,2-syn-アミノアルコール部位の立体選択的構築は選択性の向上を目指し条件の細部を検討する段階となっている.また,側鎖のβ-ヒドロキシカルボン酸部位についても良好なエナンチオ選択性を達成している.また当初は24年度以降に検討を予定していた側鎖のグルタル酸の不斉非対称化にも既に成功しており,計画をやや上回るペースで順調に研究が進捗していると考えている.
|