研究概要 |
caprazamycinは放線菌由来の核酸系抗生物であり,従来の結核菌のみならず超多剤耐性結核菌XDR-TBに対しても良好な抗菌活性を示すCPZEN-45の前駆体でもある.本研究は,新たな抗XDR-TB剤開発を目指した構造活性相関研究に適用可能なcaprazamycinの効率的な触媒的不斉合成法の確立を目的とした. 24年度は23年度中に確立した側鎖パートにおける2箇所の絶対立体化学制御法,すなわち触媒的不斉チオアミドアルドール反応を用いたβ-ヒドロキシエステル部位の構築(86%eeであったが,後に更に最適化を進め,87から93%eeの範囲まで向上した),および二核ニッケル-光学活性シッフ塩基錯体を用いた3-メチルグルタル酸無水物の触媒的不斉アルコリシスによる光学活性モノエステルの調製(モノメチルエステルを94%eeで得ていたが,合成中間体としてより適切なモノベンジルエステルとしたところ88%eeとなった)を利用し,更に合成を進めた.上記反応における生成物のカップリング,およびラムノース部位の導入を経て,側鎖部位(western zone)の触媒的不斉合成を達成した. 続いてジアゼパノン環上のβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸構造の立体選択的構築を目指し,当研究室で開発された触媒的不斉anti-選択的ニトロアルドール反応の適用を試みた.ベンジル基で保護された2-ニトロエタノールとシンナムアルデヒドを基質としてNd-不斉アミド配位子錯体を利用し反応条件を最適化したところ,84%の収率,12:1のジアステレオ選択性で所望のanli-付加体が優先的に得られ,そのエナンチオ選択性は94%eeであった.以上でcaprazamycinの不斉全合成に必要なフラグメントが全て揃い,現在は官能基変換とそれに続く各中間体のカップリング,および保護基の除去を検討している.
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