研究概要 |
本研究では,II-VI族化合物半導体のCdSeやCdTeのナノ構造体である量子ドット(QDs)やナノロッド(NRs)と局在プラズモン共鳴を持つAu等の貴金属ナノ微粒子のハイブリッド系に着目し,時間分解レーザー分光により,励起子や電子移動,エネルギー移動を解析すること,及び界面接合を直接反映した新規な電子状態の解明を目指して研究を行った。 23年度は,まずCdSe NRsに1~2nmの金ナノ微粒子を接合させた系を構築し(京都大学・寺西教授との共同研究),定常光のスペクトル測定,時間分解発光寿命とフェムト秒過渡吸収分光による解析,及び単一微粒子分光による単一微粒子の発光スペクトルと発光明滅現象,発光寿命解析を行った。その結果,以下のことが明らかになった。 1.CdSe NRs、はその異方的性質により,金ナノ微粒子は長軸方向に接合が起こる。 2.Au-CdSe NRsの吸収スペクトルはプラズモンによる吸収効果が殆ど現れずCdSe NRsとほぼ同じであるが,金ナノ微粒子サイズの増加と共に蛍光消光が観測され,数十psで電子移動反応が起こる。 3.CdSe NRsの単一微粒子の発光スペクトルは,集団スペクトルよりもバンド幅が狭い。 4.CdSe NRsの単一微粒子の発光寿命は単一指数関数ではなく,NRsの長軸サイズと励起子拡散の効果が寄与している。 5.Au-CdSe NRsは発光明滅現象のON状態だけでなくOFF状態においても著しく寿命が短く,オージェイオン化した状態からの電子移動ダイナミクスとその単一微粒子特性を明らかにした。 6.フェムト秒過渡吸収分光における励起光強度依存性の解析から,Au-CdSe NRsのオージェ再結合はCdSe NRsのみに比べて抑制される事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CdSe NRsとAu-CdSe NRsの時間分解レーザー分光,単一微粒子分光による光物性の解析は順調に進んでおり,単一微粒子分光に関する論文もほぼ投稿できる段階にある。また,国際会議での発表も行い,情報発信をしている。フェムト秒過渡吸収分光に関しても,これまでのデータに付加的な実験データを付け加え,論文をまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
フェムト秒過渡吸収分光において,広い範囲で励起光強度を変えた実験と励起波長を変えたデータを付け加えて,電子移動ダイナミクスとオージェ再結合の詳細を解析し論文にまとめる。 また今後,金ナノ微粒子サイズのもう少し大きなものを接合させた系を作成し,プラズモンとCdSe NRsの相互作用を解明する。
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