研究概要 |
近年,貴金属ナノ微粒子の局在プラズモンによる電場増強と量子ドットの相互作用が注目されており,量子ドットの発光増強や単一微粒子分光における発光明滅現象の低減など,応用面においても興味深い現象が報告されている。しかし,貴金属の局在プラズモンと半導体ナノ微粒子を直接結びつけた系は,Au/CdS,Au/PbSコアシェルナノ構造やAu/CdSナノロッド型ダンベル構造などが合成されているだけであり,時間分解レーザー分光を用いた励起子や電子移動,エネルギー移動に関する動的研究も殆ど無い。またこの様な系は,界面接合を直接反映した新規な電子状態を形成する可能性もある。 本研究では,CdSeナノロッド(4×14nm)にサイズの異なった金ナノ微粒子(粒径:1.5,1.6,2.2nm)を接合したAu-CdSeハイブリッド系を用い,その光物性を解明する事を目的として,単一微粒子分光による発光ダイナミクスおよび発光明滅現象と電子移動との関係を明らかにした。更に,フェムト秒過渡吸収分光において励起波長をオプティカルパラメトリック増幅器で変えてCdSeナノロッドおよびAu-CdSeハイブリッド系の電子状態を状態選択励起し,その後の緩和過程をフェムト秒白色光でプローブした。その結果,1σ励起による1σブリーチの立ち上がりは,Auナノ微粒子の接合にかかわらずパルス応答と同じであったが,短波長励起すると,Au接合系でCdSe NRsより立ち上がりが早くなり,また1σの収率も低下した。立ち上がり時間と1σ収率から求めたホット電子移動の収率は良く合い,また金ナノ微粒子へのホット電子移動速度を金ナノ微粒の粒径に応じて0.5-1.0psと見積もった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半導体量子ロッド-金ナノ微粒子系において,ホット電子移動というエネルギー変換の効率を飛躍的にアップすることが出来る現象を時間分解レーザー分光により見いだした。論文は,一報が、Phys.Chem.Chem.Phys.に掲載されており,もう一つはJ.Phys.Chem.Cに投稿しており現在論文審査中である。どちらも論文の質が高い雑誌であり,また,国際会議でも平成24年度は2回発表しているので,順調に研究が進展したと言える。
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