研究課題/領域番号 |
11F01720
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 輝夫 東京大学, 生産技術研究所, 教授
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研究分担者 |
GENOT Anthony 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
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キーワード | 分子計算 / マイクロ流体デバイス / 人工遺伝子反応系 / 合成DNA |
研究概要 |
本研究では、合成DNAを用いて反応ネットワークを構成し、これをマイクロ流体システムと組み合わせることによって、動的な入出力に対応可能な新しい分子計算の可能性を示すことを目的とする。従来の分子コンピュータは、与えられた入力(=分子)に対して一連の反応操作を行うことにより、静的な計算結果を得るものであるのに対して、研究代表者のグループでは近年、合成DNAを設計し、これを複数の酵素と組み合わせることにより時間領域で振動する反応系を実現している。このような反応系を用いることによって、動的に変化する入力に対して、これに対応して動的に処理を行う分子コンピュータの概念を考えることができる。これにより、生体の動的なシグナルに対応する出力を計算することが可能になるため、たとえば投薬を支援するシステムなどへの医療応用を考えることができる。 初年度である平成23年度は、研究代表者のグループの合成DNAによる反応系の構築方法、ならびにマイクロ流体デバイスの製作方法に習熟するとともに、ミハエリス-メンテン式に基づく反応モデルを用いた理論的な計算を試みた。デバイス製作については、シリコーンゴムの一種であるPDMS(Polydimethylsiloxane)を材料としたデバイス製作を行うとともに、数式計算ソフトウェアを用いて反応ダイナミクスのシミュレーションを行い、反応系ならびにパラメータ調整を行う基盤を整備した。これらの作業を通じて、周波数多重化(Frequency Multiplexing)、捕食者-被食者ダイナミクス(Predator-Prey Dynamics)等の操作について理論と実験の双方から検討を行った。さらに、Winner-take-all操作を実現するような反応系を設計し、実験的な検証を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究立ち上げの段階である初年度は、おおむね順調に作業を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は具体的な反応系を設計し、マイクロ流体デバイスへの実装を含め、実験と理論の両面から研究を進める予定である。また、いくつかの国際会議において、理論的な検討と基本的なコンセプトに関する発表を行うことを通じて、研究内容の充実を図る。
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