研究概要 |
本研究の目的は、イトカワのような微小小惑星の表面・内部構造の特徴を説明することである。 表面粒子の粒度偏析はイトカワ表面の大きな特徴のひとつであり、本研究では振動による粒度偏析(ブラジルナッツ効果)を詳しく調べるために、小型の振動容器を製作して通常の地球重力下での予備実験を行った。ついで、異なる重力条件下(10G以上)での実験を行うために、小型の遠心加速装置を設計し、現在製作の最終段階にある。今月中にひととおりの完成の見込みである。 さらに、遠心加速器の製作期間を利用して、小惑星表面の岩塊によるクレーター生成効率の減少効果に関する衝突実験を行った。クレーターは、天体表面への高速度衝突によるものであり、高速度衝突はブラジルナッツ効果の原因となる振動を引き起こすものと考えられている。それゆえ、衝突がどのような振動を励起するかを理解することは重要である。そこで、我々は、異なる粒径からなるガラスビーズ層を標的として、標的構成粒子サイズと弾丸サイズの比を変化させた衝突クレーター実験を行った。その結果、標的構成粒子サイズに比べて弾丸サイズが小さくなるにつれて、クレーターが小さくなることが示された。このことから、標的を構成する粒子サイズと弾丸のサイズ比によって、小惑星内部に伝わる振動波形や強度が異なる可能性、すなわち、ブラジルナッツ効果への影響が示唆される。本結果は、現在、国際的な専門誌に投稿中である(Guettler,Hirata,and Nakamura,submitted)。 これらの実験結果の解釈のためには、まずは2球の接触と衝突の物理過程を理解することが重要であるが、分担研究者らは現在の理論モデルでは実験結果を再現できず、何らかのエネルギー散逸の項が必要であることを示した(Guettler et al,submitted;Krijt,Tielens,Guttler,et al,submitted)。
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