研究概要 |
Dr.LungはオーストラリアNew South Wales大学で2008年に生化学・分子遺伝学の分野で学位を取得後、シドニーのMacquarie大学においてProf. Paul M Pilowskyの指導下にポスドク研究を展開し、脳幹部神経回路における自律神経中枢の研究に携わった。睡眠時閉塞性無呼吸症において高頻度に発症する高血圧症に興味を持ち、血圧を調整する脳幹部位と脳幹部の呼吸中枢との関連を明らかにすることを考えた。特に、心臓血管制御中枢である吻側腹外側延髄RVLMとノルアドレナリンA5 groupに注目し、これらの部位と呼吸中枢とを結ぶ神経回路に興味をもった。そこで、京都大学・医学研究科・高次脳形態学で開発したウィルストレーサーによる神経回路解析ツールなどを用いて、形態学的な検索を中心に上記にかかわる神経回路を研究・解析することを試みた。 (1)まず呼吸中枢から、交感神経を制御しているニューロン(プレ交感神経ニューロン)群への投射を調べる:軸索を可視化するウィルストレーサー(膜移行性シグナルのついたGFPあるいはmRFPを発現するvirus vector)を用いて、高感度に神経連絡を検索を試みた。そのためにadenoassociated virus(AAV)のサブタイプ2/1,2/2,2/5を試みたが、カテコラミンニューロンのマーカーデあるチロシン水酸化酵素TH陽性細胞への感染効率は悪く、陰性ニューロンへの感染が目立った。さらに、アドレナリン作動性ニューロンマーカーであるPNMT promoter下でGFPもしくはRFPを発現するウイルスを作ったが、良い結果を得られなかった。 (2)急性間欠性低酸素状態(睡眠時無呼吸症のモデル)を負荷して、反応するニューロンをc-Fos免疫活性で検出し、上記の実験系と組み合わせて、睡眠時無呼吸症から高血圧症への病態発生機序を探る研究:この部分に関しては低酸素状態を実現できるセットアップを用いて、低酸素に反応してc_fos陽性になるニューロンの分布を脳幹で検討する実験を行った。現在、PMT,VIAAT(GABAergic marker),VGluT(glutamatergic marker)等のin situ hybridizationと組み合わせて、どのようなニューロンが低酸素に反応するのか検索している。
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