研究課題/領域番号 |
11F01748
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斎藤 毅 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授
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研究分担者 |
DIPROIETTO Valentina 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 代数学 / 整数論 / p進コホモロジー / 対数幾何 / クリスタル / 基本群 |
研究概要 |
準安定曲線の1次対数的クリスタリン・コホモロジーのモノドロミー作用素の核と1次リジッド・コホモロジーの関係について研究を進めた。これは不変サイクル定理のp進類似にあたるものである。研究を進めるにはR.Coleman教授、B.Chiarellotto教授、A.Iovita教授の協力も得た。とくに、巾単Fアイソクリスタル係数のコホモロジーの場合を調べ、これがある特別な性質をみたす場合には、モノドロミー作用素の核のリジッド・コホモロジーによる商の次元が1であることを証明した。これは特別研究員Valentina Di Proiettoの博士学位論文で得られた結果の一般化であり帰結であったが、この証明を一部改良することでその未発表論文を改良することができた。 離散付値環上の準安定多様体とその正規交叉因子の補集合Uを考える。p進整数のある条件をみたす集合Sに対し志甫氏は、Uの閉ファイバー上のS巾単モノドロミーをもつ対数的過収束アイソクリスタルの圏を定義した。これは確定特異点のp進類似である。一方Uの生成ファイバー上では確定特異点をもつ可積分接続の圏を考える。以前の研究で、この2つの圏の充満部分圏の間に充満忠実関手を構成した。この圏の対象であるアイソクリスタルEを1つとり、EとEの双対いくつかのテンソル積の部分商の積み重ねとして得られるアイソクリスタルを考える。可積分接続に対してもこの関手によるEの像について同様の構成を考える。こうして得られた圏の間に上記の充満忠実関手は圏の同値を定めることを示した。証明にはSについての仮定と、志甫氏の結果を用いる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コホモロジーの比較定理を当初はめざしていたが、研究を進めるなかで特別研究員Valentina Di Proietto氏の博士論文で得られた結果をもとに精密化し改良していけばよいことが明らかになった。これは予想していたものより微妙な問題であり、満足できる進展である。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき準安定曲線の1次対数的クリスタリン基本群のモノドロミー作用素の核と1次リジッド・コホモロジーの関係について研究を進める。巾単Fアイソクリスタル係数の場合を完全に明らかにすることを目標とする。この分野の指導的研究者である、パドヴァ大学のB.Chiarellotto教授やカリフォルニア大学バークレー校のR.Coleman教授らと連絡をとりながら研究を進める。 半安定多様体に対する対数的収束クリスタルの基本群の研究も進める。特にモノドロミー作用素の作用を解析する。これには、この分野の世界的研究者である東京大学数理科学研究科の志甫准教授と議論しながら研究を進める。
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