研究課題
植物の成長は光、低温、乾燥といった外的要因によって大きく影響を受ける。近年の研究の発展によって植物が様々な環境情報を受容、伝達する分子メカニズムについては理解が進んだが、こうした環境要因の変化によって実際に根や葉などの植物器官の成長が調節されるメカニズムについてはまだよく分かっていない。本研究では植物の環境応答に関与する新規制御因子を単離し、それらの機能を明らかにすることを計画した。産総研高木優博士、光田展隆博士との共同研究のもとシロイヌナズナのキメラリプレッサー系統を用いて、通常生育条件下、及び50mMマニトール培地を用いた軽度の乾燥条件下で成長異常をみせる変異体スクリーニングを行った。今年度は、これまでに単離した15個の転写因子(GROWTH REGULATORY TRANSCRIPTION FACTOR, GRTF)について、機能欠損体、過剰発現体を作出し、さらに詳細な機能解析を進めた。解析の先行しているGRTF4は詳細な表現型解析の結果、細胞の増殖、分化を制御することが分かった。GRTF4の発現は植物のストレスホルモンのひとつであるアブシジン酸投与後に上昇することから、GRTF4が環境ストレスに応答して器官成長を最適化するために機能するという仮説を検討した。またGRTF10については、傷害に応答して発現上昇し、細胞の分化、脱分化の制御に関連することを示唆するデータが得られた。これらの因子の作用機構を分子レベルで明らかにするため、それぞれのGRTF-GFP植物体、GRTF-GR植物体を作出し、全ゲノムクロマチン免疫沈降(ChIP-seq)及び全ゲノム遺伝子発現解析(RNA-seq)を進めた。これまでに終了したRNA-seqのデータ解析からは、GRTF4がリンや窒素などの栄養欠乏を感知、応答するのに必要な遺伝子の発現を制御する可能性が見えてきた。
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Methods in Molecular Biology
巻: 959 ページ: 247-264
10.1007/978-1-62703-221-6_17.
http://cellfunction.riken.jp/index.html