研究課題/領域番号 |
11F01796
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
楠見 明弘 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授
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研究分担者 |
KOSZEGI Zsombor 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 外国人特別研究員
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キーワード | 1分子追跡 / エストロゲン / 神経成長因子 / 脳由来神経栄養因子 / Trk受容体 / 前脳基底部コリン作動性細胞 / 情報変換 |
研究概要 |
卵胞ホルモン(女性ホルモン)のエストロゲンは、前脳基底部コリン作動性(BFC)神経細胞に作用し、脳皮質の機能に大きな影響を与えることが知られている。一方、神経成長因子(nervegrowthfactor=NGF)、脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor=BDNF)は、それぞれ、神経細胞上の受容体tropomyosin-related kinase AまたはB(TrkA or B)に結合し、BFC神経細胞でも、その生存・成長・シナプスの機能亢進などを支持している。さらに今までの研究から、エストロゲンは、NGF-TrkA系やBDNF-TrkB系のシグナルに様々な影響を与えることが分かってきている。そこで本研究では、これらのシグナル系の働く過程と機構の解明を1分子イメジングで解明し、さらに、それらに対するエストロゲンの影響を明らかにすることを目的としている。具体的には、以下の3点の解明を進めている。(1)TrkAおよびTrkB受容体の神経細胞上での熱拡散運動とそれに対する制御、リガンド結合後の変化を明らかにする。(2)受容体の下流分子と受容体との相互作用を調べ、それに対するエストロゲンの効果を検討する。(3)これらの変化が起こる機構を解明する。 本年度は、TrkAおよびTrkB受容体の細胞上での1分子イメジング・1分子追跡を恒常的に再現性よく行うことに成功した。その結果、2量体および多量体形成、それらに対するリガンドの影響がわかってきた。定常状態でも2量体が形成されること、リガンド添加後に2量体の寿命が大きく伸びることを見出した。さらに、受容体と低分子量Gタンパク質Rasとの相互作用を調べたが、長時間の相互作用は見出されないという、今までの常識を覆す結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1分子レベルで熱拡散運動を調べることで、2量体や多量体が観察でき、シグナル機構の研究を進めるための基礎ができた。
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今後の研究の推進方策 |
Trk受容体、その下流シグナル分子であるGrb2,SOS,Rasをすべて1分子イメジング・1分子追跡を行う。可能な時には、2種分子の同時追跡を行い、分子間相互作用を調べる。それらの方法によって、以下の解明研究をおこなう。 (1)Trk受容体の下流分子の動態とTrk受容体との相互作用、それらのNGF,BDNFを結合させたあとの変化、を1分子レベルで解明する。 (2)これらの分子群の動態や分子間相互作用が、NGF,BDNF,エストロゲンによってどのように影響されるか、どのような機構で起こるかを解明する。
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