研究課題/領域番号 |
11F01798
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 敏道 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授
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研究分担者 |
FROST Kris 大阪大学, 蛋白質研究所, 外国人特別研究員
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キーワード | 核磁気共鳴 / 動的核分極 / 生体分子 / 超偏極法 |
研究概要 |
これまで私たちは高磁場動的核分極法によるNMRの高感度化装置の開発を行って来た。この方法で、14.1Tの高磁場(1H-NMR共鳴周波数600MHz)で、有機物について通常法に比べ約500倍の固体NMR感度向上を実現した。この方法では、電子スピンを安定ラジカルとして試料に加え、約30Kの温度で電子スピン遷移を飽和させる高出力テラヘルツ波を照射する。この装置は、最高磁場で動的核分極法を実現したこと、最低温度でマジック角試料回転を行ったこと、テラヘルツ波の周波数可変性を導入したなど、動的核分極について多くの世界初の記録を持つ。この装置の試作装置がほぼ完成したことにより、本研究では、これを蛋白質などの構造解析に用いるための方法論を開発する。これによりNMR感度の制約から、適用できなかった分子量10万以上の蛋白質の構造解析が可能になる。 この方法の応用として、平成23年度は光励起ラジカルを用いて、動的核分極法を行う実験を行った。この方法では、サブミリ波の代わりに可視レーザー光を用い、実験は容易になる。実験では、色素としてフラビンを用いてアミノ酸のNMR感度向上を試みた。まず、溶液中ではこの実験により感度が10倍向上することを確認した。固体中では、極低温でのみこの効果が確認できた。この実験を再現性よく行うためのガラスマトリックスの組成を検討して、グリセロールがすぐれていることも確認した。本年は温度90Kで容易にこの実験を行うマジック角高速試料回転NMR検出系を開発して実験結果を得た。これより、色素分子とアミノ酸分子の距離が重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験試料の化学合成など調製法や、極低温試料回転実験を行う装置についてついて、ほぼ確立することができ、今後、新しい実験を行う目処が付いたから。
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今後の研究の推進方策 |
これより、色素分子とアミノ酸分子の距離が重要であると考えられる実験結果を得た。今後は、色素やアミノ酸を高濃度にして、両分子間距離を短くすることが考えられる。しかし、これでは大量の色素分子を必要になる。今後はこの問題を克服するために、共有結合で両分子を約2nmの距離で固定することで、核分極を増大することを試みる。また、感度増大実験の再現性を確認して実験条件の最適化を実施する。
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