研究課題/領域番号 |
11F01799
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
幾原 雄一 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授
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研究分担者 |
LV Shuhui 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 外国人特別研究員
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キーワード | 走査透過型電子顕微鏡 / 高角環状暗視野(HAADF)像 / 界面原子構造 / Sr_2FeTaO_6 / 第一原理的な理論計算 / SrTiO_3結晶基板 / 磁性 / 電子状態 |
研究概要 |
ダブルペロブスカイト構造のSr_2FeTaO_6結晶は、ディスオーダー相で頻繁に存在し、23K以下の温度においてスピングラス的挙動を示すことが明らかになった。このような挙動は、磁性Feイオン原子間の第二最近接原子間の相互作用(Next-Nearest-Neighbour Interaction)に由来することが以前から報告されている。このNNN相互作用の存在を検証するために、まず実験的にSr_2FeTaO_6薄膜における安定なBサイトオーダー相を得ることが不可欠である。パルスレーザーデポジション法によって、SrTiO_3結晶基板の(111)面上にエピタキシャル成長させたダブルペロブスカイト構造の良質なBサイトオーダーSr_2FeTaO_6薄膜を得ることができた。 球面収差補正器(Cs-Corrector)搭載の走査透過型電子顕微鏡(STEM)の高角環状暗視野(HAADF)像及び電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いて、Sr_2FeTaO_6薄膜の微細原子構造について詳細な観察を行った。 この投影原子構造モデルを基に、理論計算で用いる三次元原子構造モデルが推定できる。SrTiO_3結晶基板では二種類の終端層の極性、Sr_2FeTaO_6薄膜では三種類の終端層、六回対称の界面原子積層を考慮すると、18種類の三次元界面原子構造モデルが推定される。界面吸着エネルギーの計算結果によると、界面においてSrTiO_3結晶はSrO_3-終端及びSr2FeTaO6結晶はTa-終端のケースが安定であることが明らかになった。この構造に対して、Vienna ab initio simulation package(VASP)計算を行い、界面電子状態をシミュレートした。その際、NNN相互作用するFe磁性イオンの様々な相対配列を考慮した。 全エネルギーの計算結果によると、反強磁性層内Feイオンと強磁性層間Feイオンが存在する場合が最安定な構造であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究体制の中で、日本では機能性薄膜の実験的成長、加工、評価を行ってきており、パルスレーザーデポジション法によって、SrTiO_3結晶基板の(111)面上にエピタキシャル成長させたダブルペロブスカイト構造のBサイトオーダーSr_2FeTaO_6薄膜の作製に成功させた。これらの実験結果に対して、界面局所原子構造・吸着エネルギー・界面誘起磁性・界面電子状態を分析するために、またこれらの巨視的な物性と微視的な物理の相関を把握するために、密度汎関数理論に基づく第一原理計算を行った。新しい試みとして、スーパーコンピューターを駆使し、従来は困難であった大規模計算を必要とする界面格子ミスマッチに起因する弾性場を考慮し、それが電子状態に及ぼす効果についても、計算に取り入れることを試みた。
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今後の研究の推進方策 |
基板上の薄膜については基板界面での構造・応力緩和の考慮が不可欠なため比較的大きな構造モデル(スーパーセル)を設定しなければならない,物理特性測定装置PPMS(Physical Property MeasurementSystem)法によって,二次元電子ガス層の形成を調べる。
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