研究課題/領域番号 |
11F01809
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中家 剛 京都大学, 理学研究科, 教授
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研究分担者 |
BRONNER Christophe 京都大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | ニュートリノ / ニュートリノ振動 / 加速器 |
研究概要 |
Bronner氏は、T2K実験において電子型ニュートリノ出現事象の新しい解析方法を確立した。この解析では、以前の振動解析には使っていない多くの検出器の測定結果をインプットとして用いることにより、実験の系統誤差を大きく減少させることが可能となる。Bronner氏は特に、後置検出器であるスーパーカミオカンデの系統誤差の取り扱いと解析コードの高速化に大きく貢献した。T2K実験は、2012年6月までに測定されたデータに対してこの解析を行い、オフィシャルな結果として発表する予定である。 Bronner氏は、前置ニュートリノ検出器のひとつでビーム軸上に設置されているニュートリノビームモニター(INGRID)を用いた研究にも大きく貢献した。まず前置検出器INGRIDと後置検出器スーパーカミオカンデ間のニュートリノ飛行時間(Time of Flight)の測定精度の向上を目的として、INGRIDのニュートリノイベントに対する時間分解能を10n秒まで向上させた。具体的には、シンチレーション光がファイバー内を移動する距離や読み出しエレクトロニクスのケーブルの長さの違いを補正することにより、上記の時間分解能を達成した。このINGRIDの結果を用いて、T2K実験は、ニュートリノ飛行時間から、「ニュートリノの絶対質量」と「ニュートリノ速度」の測定を進めている。Bronner氏のINGRIDへの貢献は、この他にも、東日本大震災後の再測定に向けた準備作業、読み出しソフトウェアーの最適化、光検出器の電源モニターの開発、データ解析ソフトウェアーの開発と多岐に渡る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画はすべて達成した上で、ニュートリノビームモニターの時間分解能の向上をはじめとする計画になかった多くの成果を上げているため。
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今後の研究の推進方策 |
Bronner氏は、平成23年度に開始した電子型ニュートリノ出現事象の解析を継続する。その後、平成24年度の加速器夏期シャットダウンまでの測定データを用いて電子型ニュートリノ出現事象の解析を行い、結果を学術論文としてまとめる。 Bronner氏はまた、平成23年度の開始したニュートリノビームモニターとスーパーカミオカンデを用いたニュートリノ飛行時間の研究を継続し、ニュートリノ絶対質量とニュートリノ速度の測定を行い、結果を学術論文としてまとめる。
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