研究概要 |
T2K実験は、大強度陽子加速器J-PARCでニュートリノビームを生成し、ニュートリノ生成標的から28m離れた前置ニュートリノ測定器と295km離れたスーパーカミオカンデでそれぞれニュートリノを検出し、ニュートリノ振動の詳細な研究を行う。 平成25年度のBronner氏の研究成果は、Markov Chain Monte Carlo法を用いたニュートリノ振動解析、前置ニュートリノ検出器の運転責任者として安定したデータ収集の実現、時間分解能の向上を目的とした前置検出器アップグレード作業からなる。 ニュートリノ振動解析では、電子型ニュートリノ出現事象を世界で初めて発見し、CPの破れを引き起こす複素位相δ_<cp>に対して制限を与えることに貢献した[1]。またMarkov Chain Monte Carlo法を用いて、T2K実験で初となる電子ニュートリノ出現モードとミューオンニュートリノ消失モードの同時解析を行った。同時解析の結果は、現在、論文にまとめている。 前置ニュートリノ検出器の運転責任者としては、J-PARC(茨城県東海村)に滞在し、「全測定器の状態の把握」、「運転スケジュールの決定」、「問題への対処」、「データ品質の確認」などを行い、安定かつ高い品質での物理データ収集を実現した。 前置検出器アップグレード作業では、時定数の短い光源を内蔵したシンチレータープレーンをフランス、イギリスの研究者と共同で開発した。このシンチレータープレーンは、2014年夏に前置検出器に設置される予定で、この結果、前置検出器からスーパーカミオカンデまでのニュートリノ飛行時間の測定精度が大きく向上する。 [1] T2K Collaboration, Phys. Rev. Lett. 112.061802 (2014)
|