研究概要 |
本研究では,インターネットトラフィックの特性を明らかにすることを目的として統計的解析手法の有用性と応用可能性を調査している.本研究は,JSPS/CNRS間の2国間共同研究プロジェクトの枠組みの中で行われており,今年度は1)インターネットトラフィックにおけるアノマリ検知および2)災害対応におけるソーシャルネットワークの活用に関する研究を遂行した.以下にそれぞれの研究実績をまとめる. 1)インターネットトラフィックにおけるアノマリ検知 ネットワークトラフィックにおけるアノマリは,インターネットトラフィックの大部分を占めており,ネットワークの通信性能に影響を及ぼしている.そのため,これらの脅威を検出し究明することは最重要課題である.そのため,過去10年間に渡り,数多くの研究者がこの課題に取り組みいくつかの自動アノマリ検出ツールを提案してきた.本研究において,我々は,まず従来のアノマリ検出器の欠点を克服したパターン認識ベースの検出手法を提案し,次に異なる検出器から得た結果を比較するベンチマークツールを提供することで,アノマリ検出における問題を明らかにした. 2)災害対応におけるソーシャルネットワークの活用 広域災害後における被災情報の収集は,人的資源を要する災害対応において重要な課題である.本研究では,被災したソーシャルネットワークユーザの投稿情報から有用なものを抽出することにより調査チームによる災害状況調査を支援する手法を提案した.具体的には,写真共有サイトのFlickrから東日本大震災発生以降の情報を抽出し検証した.我々は,Flickrユーザの挙動から主要な事象の発生状況を検出し,投稿された写真とタグからこれらの事象の背景を説明する手法を提案し,東日本大震災における地震と津波に対する検証結果から災害対応においてソーシャルネットワークを活用することの重要性を明らかにした.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の研究目標は,第一に,インターネットトラフィックにおけるアノマリ検出に関する研究を遂行することである.我々は特にアノマリ検出器のベンチマーク手法を改良し現行のアノマリ検出器をよりよく評価することを目標としている。第二の研究目標は,アノマリ検出手法で活用した統計的解析手法を他のプロジェクトのデータ解析に応用することである.例えば,東京大学のグリーン東大プロジェクトのデータに対して統計的解析手法を用いて分析・調査し,さらなるエネルギー消費の削減可能性を発見することを目標とする.
|