研究課題/領域番号 |
11F01816
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
齋藤 秀和 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノスピントロニクス研究センター, 研究チーム長
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研究分担者 |
SPIESSER Aurelie 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノスピントロニクス研究センター, 外国人特別研究員
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キーワード | スピントロニクス / ゲルマニウム / スピン注入 / スピントランジスタ / 酸化ゲルマニウム / トンネル接合 |
研究概要 |
電子のスピン自由度を利用して不揮発的に情報を記憶するトランジスタ(スピントランジスタ)は、世界的に熾烈な開発競争の只中にある。このデバイスを実現するためには、半導体中へのスピン注入技術を確立する必要がある。スピン注入とは、強磁性体からスピン偏極電子を半導体へ注入し、そのスピン情報をトランジスタのベース層幅程度(数十~百nm)を伝搬させる技術である。ここで、Geは次世代MOSFETのチャネル材料の有力候補とされており、スピン注入技術の確立が期待される。高効串のスピン注入のためには、高品位の強磁性体/Ge接合を可能とする材料・成長技術が必要であると考えられるため、新規障壁層材料や強磁性体を用いたトンネル接合技術を開発する必要がある。 本研究では将来のGe着不揮発性トランジスタの実現のために必要である、Geへの富効率のスピン注入技術のための高品位接合の開発を行う。本年度は、主に新障壁層材料GeO2を用いたGe中へのスピン注入を行った。GeO2はGeに対して高品位の鼻面を形成できるためゲート酸化膜として用いられているが、トンネル障壁材斜としての報告例はなかった。そこで、不純ガスの少ないバルク状GeO2蒸着源の開発を行い、これを用いた高品位Fe/GeO2強磁性トンネル接合を実現することにより、スピン注入に必要な臨界電流密度を従障壁層MgOと比較して約3桁に達する劇的な削減に成功した(A. Spiesser et al. Jpn. J. Appl. Phys.(2013))。この成果は、Geを用いたスピントランジスタの低消費動作に極めて重要であり、グリーンITの発展へ大きく貢献できると期待される。 さらに、異方性トンネル磁気抵抗効果という現象をSi基デバイスにおいて初めて観測する等、当初予想していなかった成果を挙げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トンネル障壁層を用いたスピン注入実験に関して、新障壁層材料GeO2を用いたGeへの高効率スピン注入に成功し、さらに異方性トンネル磁気抵抗効果という新親象を見出すなど、予想を上回る成果を挙げた。一方で、磁性半導体GaMnAsや新磁性材料MnGeを用いたトンネル障壁層を用いないGeへのスピン注入は、接合抵抗が非常に高くなってしまうという問題が生じており、これまで確認できていない。
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今後の研究の推進方策 |
MnGeおよびGaMnAsを用いたGeへのスピン注入を目指す。これまでの研究により、半導体への効率的なスピン注入のためには強磁性トンネル接合抵抗をできるだけ低くすることが有効であることがわかっている。そこで、より高ドープGe基板、もしくはデルタドープ等の手法を用いて接合抵抗の低減を図り、スピン注入を実現する。
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