研究概要 |
本研究の目的は,新しい展開型構造の提案,及びその展開挙動のシミュレーションである。本研究では,特に環境問題・エネルギ問題の観点から,大型宇宙構造物としての太陽発電衛星に着目し,その平面状構造を平面直交二方向に同時に収納・展開する方法,及びその構造を安定化する方法を提案している。 本研究ではこれまで,提案する展開型構造の展開挙動を,独自の安定化手法を用いた非線形構造解析や剛体運動計算により確認してきており,国内特許も取得している。しかしながら,これらのシミュレーションは,全体的な展開プロセスは把握できるものの,線画で表されているため,特に収納直前の状態が分かりにくいものとなっていた。そこで本研究では,新たに3D-CGプログラムでレンダリングし,展開シミュレーションを行なった。本年度は,その結果が国際雑誌に掲載され,研究実施計画における目標を達成している。また,国内学会・国際学会での発表も予定通り行ない,9月には博士の学位も取得している。 本研究では,上記の課題に加え,これまでに提案してきた展開型構造を,コスト・軽量性・構造精度の観点から改良することも研究計画に掲げている。すなわち,これまで提案してきた展開型構造は回転軸の角度に高い精度が要求されるという問題があるのに対し,本研究ではその解決策を提案しようとしている。本年度は,そのアイデアを特許として出願し,早期審査により取得している。一方,これまでのシミュレーションは,展開プロセスを示すこと自体が目的であったが,今後,より実際的な検証を行なうために,慣性力や摩擦力を考慮した動力学計算にも取り組んでおり,来年度5月に国際学会で発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,本研究では,これまでに提案してきた展開型構造を改良し,その動力学的挙動の解明に取り組むことを予定している。すなわち,これまで提案してきた平面状構造物の二方向同時展開法は回転軸の角度に高い精度が要求されるという問題があるのに対し,本研究ではそれをコスト・軽量性・構造精度の観点から改良し,その展開挙動のシミュレーションを行なう予定である。また,これまでに行なってきたシミュレーションは,展開プロセスを示すこと自体が目的となっていたが,今後は,より実際的に慣性力や摩擦力を考慮した動力学計算を行ない,展開に必要な動力や時間及び構造部材の性能などを明らかにしていく予定である。
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