研究課題
初年度の目標として掲げていたこととして、ベクションの現象面としての理解を進める事と、意識に上らない広域運動刺激によるベクションの生起の検討をあげていた。ベクションの現象面としての理解としては、1.輝度刺激以外の変調ではベクションに変化を及ぼしにくい事、2.ベクションの残効が運動残効と独立に生じる事、3.外発的な運動刺激以外にも脳内で作り出した内発的な刺激でもベクションが起こる事、4.歩行行為によってベクションが促進される事、5.風刺激を顔に与えることによってベクションが促進される事、6.ベクションと自己愛傾向の性格に相関があること、以上を明らかにし、海外雑誌論文の形で成果をあげた。それぞれ、既に引用もされており、論文としての評価も一定以上の成果を収めている。無意識刺激でのベクションの生起は実験に成功し、妥当なデータの収集が行えた。その成果について、6月の国際学会で発表を行った。さらに、12月と1月の期間にオーストラリアのウーロンゴン大学において、その刺激を用いた際に得られる眼球運動の位置の計測を行い、データを取得した。日本で得られたデータにそのデータを加算し、国際学術論文紙に投稿を終わらせている。無意識刺激においても、ベクションは駆動され、眼球運動も駆動されていた。このことは、運動知覚の成立という意識に上る経路以外にも、身体制御系を駆動するが意識に上らない無意識の経路をベクションが有していることを示しており、ベクション研究に置ける大きな発見になると同時に、意識、無意識の枠組みを実験心理学に持ち込んだ優れた成果になると思われる。引き続き実験を行うと同時に、論文査読を確実にクリアし、大きな成果として世界に公表されるように尽力している所である。
2: おおむね順調に進展している
一年目の目的は、実験を終わらせること、オーストラリアで眼球運動などのデータを取る事であった。実験は全て遂行し、データの傾向も良いもので十分な発表の質が保てた。さらに、冬にオーストラリアに2ヶ月滞在し、眼球運動のデータを取得出来た。国際学会での発表を一件こなし、国際雑誌論文に投稿中であるもある。まだ査読の結果がきていないため、当初以上の進展とは言えないが、論文が受理されれば、大きな最終目標の一つを達成出来た事になる。投稿した原稿の水準は高く自信を持っている事から、今後の進展も順調である事が期待される。
現在、国際雑誌(Perception)に実験で得られたデータを投稿している。この投稿で、査読者が指摘した箇所を訂正し、受理に至るプロセスが、今後の推進方策に重要な意味を持っている。査読者がなにを不備として感じているかに対して正しい補足、補完を行って行きたい。具体的には、眼球運動のデータが不足しているなら、オーストラリアへ渡航し眼球運動の実験を行う。自己移動感覚のデータが不足しているならば、九州大学で自己移動感覚の実験を追加する。論文が受理された後には、更なる発展を思案し、研究計画書に記載した以上の成果が上げられるように尽力したい。
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Perception
巻: (In press)
Seeing & Perceiving
Japanese Psychological Research
Vision Research
巻: 51 ページ: 2499-2508
巻: 40 ページ: 1390-1392
巻: 40 ページ: 1241-1244
巻: 40 ページ: 1237-1240
巻: 24 ページ: 541-544
巻: 40 ページ: 747-750