研究概要 |
オイルボディは多くの植物に存在し,脂質を蓄積するための重要なオルガネラである.オイルボディは種子や葉など様々な器官に存在している.しかし葉のオイルボディに関する知見は少ない.私は葉のオイルボディと病原糸状菌応答に注目した研究を行っている. カレオシンはオイルボディ膜タンパク質ファミリーのひとつである.私はカレオシン3(CLO3)とGFPの融合タンパク質を用い,葉のオイルボディのプロテオミクス解析を行い,新規オイルボディタンパク質を同定した.このタンパク質とカレオシンのリコンビナントタンパク質による酵素反応により,α-リノレン酸から酸化脂肪酸(オキシリピン)が合成されることを見出した。このオキシリピンは炭疽病菌に対する抗菌活性を持つことを見出した.このことから,オイルボディは基質(脂肪酸)と酵素を集積し,効率よく抗菌物質を産生すると考えている. CLO3mRNA配列には5'非翻訳領域に小さなORF(uORF)が存在する.真核生物では,uORFにコードされるペプチドが自身を翻訳したリボソームに作用し,下流のORFの翻訳を妨げる機構がある(Hanfrey, et. al., 2005).CLO3mRNAのuORFの役割を調べるため,uORF領域を含むCLO3mRNAとGFPの融合遺伝子をCaMV35Sプロモーター下で制御する形質転換シロイヌナズナを作出した. CLO3とオイルボディは様々なストレスで誘導されてくることが知られている.しかしその誘導機構はほとんど明らかでない.私はCLO3とGFPの融合遺伝子をCLO3プロモーター下で制御する形質転換シロイヌナズナをマーカーラインとし,葉型オイルボディ形成に異常を示す変異体をスクリーニングした.この変異体をLeaf oil-body-protein accumulating(loa)変異体とし,現在までに5ラインを単離した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は所属が変更したことから,新しい研究室への慣れが必要であったため,前半はやや研究計画に遅れが生じる部分があった.研究室生活に慣れてからは,実験計画が順調に進み始め,最終的には当初の予定通りの進展状況まで追いつくことができた.このペースを維持することが出来れば,来年度以降は,より研究計画が進展すると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
カレオシンと新規オイルボディタンパク質が関わる抗菌物質産生機構については,来年度中を目標に,研究成果を論文としてまとめる予定である. CLO3mRNAのuORFの役割については,今後観察を進めていきたい. 来年度からは,loa変異体の解析に重点を置いて,研究を進めていきたいと考えている.さらなる変異体の単離を目指すとともに,得られた変異体のマッピングによる原因遺伝子の特定を進めていく予定である.原因遺伝子の特定から,その遺伝子の機能解析へと研究を発展させていく.
|