研究概要 |
オイルボディは多くの植物に存在し,脂質を蓄積するための重要なオルガネラである.オイルボディは種子や葉など様々な器官に存在している.しかし葉のオイルボディに関する知見は少ない.私は葉のオイルボディと病原糸状菌応答に注目した研究を行っている. カレオシンはオイルボディ膜タンパク質ファミリーのひとつである.私はカレオシン3(CLO3)とGFPの融合タンパク質を用い,葉のオイルボディのプロテオミクス解析を行い,新規オイルボディタンパク質を同定した.このタンパク質とカレオシンのリコンビナントタンパク質による酵素反応により,α-リノレン酸から酸化脂肪酸(オキシリピン)が合成されることを見出した.このオキシリピンは炭疽病菌に対する抗菌活性を持つことを見出した.また,炭疽病菌の感染により,このオキシリピンが増加することから,このオキシリピンは,シロイヌナズナのファイトアレキシンであることが明らかになった. CLO3とオイルボディは様々なストレスで誘導されてくることが知られている.しかしその誘導機構はほとんど明らかでない.私はCLO3とGFPの融合遺伝子をCLO3プロモーター下で制御する形質転換シロイヌナズナをマーカーラインとし,葉型オイルボディ形成に異常を示す変異体をスクリーニングした.この変異体をleaf oi1-body-protein accumulating (loa)変異体とし,現在までに5ラインを単離した.そのうち,3ラインについては,変異部位の特定まで終了している.また,そのうちのさらに2ラインについては,原因遺伝子の特定まで終了している.loa1変異体では葉にオイルボディが異常蓄積していた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CLO3の研究においては,オイルボディがファイトアレキシンの合成に関わっているという,新しい知見を得ることが出来た.研究の成果は学会でも発表している.現在,この研究についての論文を投稿中である.また,変異体スクリーニングの系については,当初の予定通り,数ラインの変異体を獲得することができた.原因遺伝子の特定についても,マッピングは進んでいる. CLO3の研究については,論文を書くことを目標としている.さらに,病害抵抗性についても調べていきたいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
変異体スクリーニングの系については,マッピングの終わっていないもの,原因遺伝子の特定ができていないものを,優先的に解析していきたい.原因遺伝子の特定が完了したものについては.オイルボディと原因遺伝子の関係について,さらなる研究を進めていきたい.
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