研究概要 |
申請者のこれまでの報告により(Maruyama et al.J.lmmunol,Maruyama et al.Infect.Immun,Maruyama et al.J.Bone Miner.Metab.)骨と自然免疫系との間には密接な関係があることが明らかとなってきた。現代骨代謝学における最大の発見は破骨細胞分化誘導因子RANKLの同定であり、骨破壊抑制を目的とした抗RANKL抗体の使用が本邦でも開始された。しかし、既に重症感染や低Ca血症による複数の死亡例が報告され、その安全性に疑問符がつきつつある。その為、RANKLよりマイルドな作用点を持ち免疫系に影響を与えない新規骨粗鬆症治療標的の同定や炎症と骨破壊を同時に制御する新規関節リウマチ治療標的の同定などが切望されており、「骨自然免疫系」制御機構の解明はこうした課題の解決に一助を与える可能性がある。申請者はTLRシグナルの負の制御因子であるTANKがRANKL刺激によって誘導され、TRAF6のユビキチン化抑制を介した破骨細胞分化の負の制御を担っていること、さらには骨芽細胞での1L-11発現抑制を介して骨形成を阻害していることを明らかにした(Maruyama et al.J.Biol.Chem,2012)。加えて、転写因子Jdp2が破骨細胞特異的遺伝子の発現誘導に必須であり、Jdp2欠損マウスは著明な大理石骨病を発症すること、またこの転写因子が好中球の正常分化に必須の遺伝子発現も制御し、未成熟で機能障害を呈する好中球が原因でJdp2欠損マウスは細菌感染に対し脆弱である事を発見した(Maruyama et al.Immunity,2012)。さらに、IL-10によって誘導されNF-kBを抑制する因子と考えられている転写調節因子Xが破骨細胞の融合を調節していることを明らかにした(Maruyama et al.under revision)。現在は、IL-17依存的に骨芽細胞から分泌され破骨細胞の融合と炎症性サイトカイン産生を阻害する因子Yの同定に成功し、これを自己免疫性骨破壊の治療に応用すべく検討をすすめている。
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